天球院(てんきゅういん)は、京都市右京区にある臨済宗妙心寺派の寺院です。

江戸時代初期の1631年頃に、岡山藩主であった池田光政(いけだみつまさ)により創建されました。

日本で最大規模の禅寺である妙心寺(みょうしんじ)には48の塔頭があり、この天球院もその1つ。

お寺の見どころは「京狩野の重鎮・狩野山楽山雪親子の代表作である障壁画」!

本堂には、絢爛豪華な障壁画(デジタル複製)が数多く展示されています。

「狩野派の伝統を受け継ぐ障壁画を観たければ天球院へ!」

今回は、そんな天球院を訪れてみました。


天球院の歴史

では、まずはじめに天球院の歴史を一緒に見て行きましょう!


天球院は、日本で最大規模を誇る禅寺の一つである妙心寺(みょうしんじ)の塔頭寺院です。

江戸時代初期の1631年から1635年にかけて、美濃池田氏の流れであった岡山藩主・池田光政(いけだみつまさ)が、大叔母のために創建したと伝えられています。

この大叔母の名前がお寺と同じ天久院(てんきゅういん)

この天久院の兄である初代姫路藩主の池田輝政(いけだてるまさ)は、かの国宝姫路城を現在の姿に改修した人物です。


この天久院さん、実はこんな逸話をお持ちの豪胆な女性なんです。

彼女はもともと因幡国若桜藩(現在の鳥取県)の初代藩主・山崎家盛(やまざき いえもり)の正室でした。

天下分け目の「関が原の戦い」の際、旦那の家盛は石田光成側の西軍でしたが、戦には積極的じゃありませんでした。

家盛「あー、なんかでっかい戦が始まってしもたなー。」

家盛「一応西側についたけど、のらりくらり対応しとこか。」

家盛「けど大将の光成はんはめっちゃ怖いしなー。適当にやってたら怒られるかもな。」

ということで、家盛は自分の保身を図るためになんと自身の正室である天久院を人質として差し出そうとしたんだとか・・・。

家盛「せや、うちの女房(天久院)を光成はんに差し出したら俺には手を出せないんじゃね?」

家盛「おぉ、俺天才!そうしよう!天久院はーん、ちょっと俺の代わりに光成んとこ人質にいってきてー。」

当然ながら天久院は大激怒!

旦那である家盛の首筋に自身の短刀をつきつけて一言。

天久院「アホちゃうか?しめたるぞ?」

家盛「ごごごごめんやで。ちょっとしたシャレやないですか。ガクガクブルブル。」

天久院「はぁ?もう愛想つかしたわ。兄の元に帰らせてもらいます。」

てな感じで理不尽な旦那に刀をつきつけ離縁、兄である池田輝政(いけだてるまさ)のもとに帰ったそうです。

教訓:奥さんは大事にしましょう。のど元に何か突きつけられても知りませんよ。


また、この寺院が作られたとき、土の中からたくさんの球(たま)が出土したんだとか!

こうした史実などがあり、天球院(てんきゅういん)という寺名がつけられたんですね。


また、このお寺の創建当時は、京都における禅寺の権力が大きく動いた時代でもあるんです。

一言で言うと、

大徳寺から妙心寺へ!」

京都の禅寺の権力は、豊臣秀吉の晩年に起こる「千利休切腹事件」により大きく変わりました。

「大徳寺の楼門に建立した千利休の木像の下を、秀吉に通させるという不敬により秀吉が激怒!千利休に切腹を命じた!」という事件ですね。

京都の禅寺と言えば、大徳寺(だいとくじ)が隆盛をきわめていましたが、この事件が端緒となり、大徳寺が衰退、代わりに妙心寺が台頭したんです。


この時代の流れにより、妙心寺には数多くの塔頭寺院が建立され有力大名からの庇護も強まりました。

そのうちの一つが、この天球院。

お寺の見どころである「狩野山楽/山雪の障壁画」も、丁度この頃に奉納された作品です。

この時代の宗教芸術は、こうした禅宗の権力移行が大きく関わっているのかも知れませんね。

その後、本寺は代々にわたり池田氏の菩提寺として手厚く庇護されてきたといいます。

おしまい。

(上記の記載内容には諸説有りますので、悪しからずご了承ください。)

天球院について

天球院は通常非公開であり、「特別拝観期間」にのみ一般公開される場合があります。

京都の特別拝観情報

以下は「2019年冬の特別拝観」の情報です。


お寺の詳細

住所:〒616-8035 京都府京都市右京区花園妙心寺町46
連絡先:075-462-9041
創建:1631年頃
開基:池田光政(いけだみつまさ)
宗派:臨済宗(りんざいしゅう)
本尊:釈迦如来(しゃかにょらい)

拝観時間

10:00~16:00

拝観料

大人 600円
子供 300円

その他注意点

・写真/動画撮影可能な場所や一脚/三脚の利用可否は、必ず係員に確認しましょう。

・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。


では次に、天球院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!


天球院の見どころ

*のついている見どころは有料エリアです。

山門

お寺の入口である山門(さんもん)です。

本堂【重要文化財】

右側の建物は庫裏(くり)、写真奥の入口から先の建物が本堂(ほんどう)です。

お寺の創建時に建てられた、江戸時代初期の建築です。

こうした唐破風の玄関をつけた構造が江戸時代の禅宗方丈建築の典型例なんだそうです。


本堂や内部に飾られている障壁画は、国の重要文化財に指定されています。


本堂内部には、狩野山楽/山雪の障壁画(デジタル複製)が展示されています。(画像はパンフレットより。)

「竹に虎図」には、左手が虎の親子、右手にはなぜか豹(ヒョウ)が描かれています。

この当時の日本人は虎を目にすることがあまり無く、中国から送られたヒョウの革を「メスの虎の模様」と思い込んでいたんだとか。

いずれも京狩野の真髄とも言える、濃淡がくっきりとした絢爛豪華な作風ですね。

現在の展示物はデジタル複製で、本物は京都国立博物館に寄贈されているそうです。

方丈庭園*

方丈庭園(ほうじょうていえん)は、大木の松を中心とした苔と石組みで構成される枯山水庭園です。

冬に訪問したため、苔が色あせ侘しい雰囲気を醸し出しています。暖かい時期だとまた違う表情を見せてくれるんでしょうね。

境内*

山門から本堂へ続く、境内の通路。


通路の横庭には、天球院の名前の通り「球」を意識した作庭が随所に施されていました!


境内の奥には、表に「明」裏に「暗」と彫られている石が置かれていました。

禅の世界では、全ての事象が表裏一体を成す「明暗双々」という言葉がありますが、それに由来するものでしょうか。

(明は「差別・現実」、暗は「平等・理想」を表したりするそうです。)


入口の花頭窓(かとうまど)より、方丈庭園を望む。


本堂西側の坪庭には、天球の文字がかたどられた手水鉢が。(「天球手水」と言うそうです。)

天球院の動画


天球院の写真

Tenkyu-in Temple (Ukyo Ward, Kyoto) [天球院:京都市右京区]

天球院の御朱印

天球院の御朱印は、ご本尊の「釈迦如来(しゃかにょらい)」

本堂で頂くことができます。(300円)


天球院への行き方/アクセス方法

天球院は、妙心寺の境内にあります。

最寄り駅は「JR花園駅」または「嵐電北野線 妙心寺駅」です。

「京都駅」、「河原町駅」、「祇園四条駅」からバスで行くことも出来ます。


大阪駅からのルート例(電車)

乗換え案内サイト

①JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、JR嵯峨野丸線に乗り換え。

②JR嵯峨野線で「京都駅」から「花園駅」へ。

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なんば駅からのルート例(電車)

乗換え案内サイト

①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。

②JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、JR嵯峨野丸線に乗り換え。

③JR嵯峨野線で「京都駅」から「花園駅」へ。

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京都駅からのルート例(電車)

乗換え案内サイト

①JR嵯峨野線で「京都駅」から「花園駅」へ。

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花園駅からの徒歩ルート例

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Picture 1 of 4

徒歩約6分(400 m)です。


妙心寺駅からの徒歩ルート例

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Picture 1 of 3

徒歩約5分(300 m)です。


京都駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「京都駅前 乗り場D3」から京都市バス「26系統」に乗車、「妙心寺北門前」で下車。

バス会社:京都市バス
行先・系統:26系統[北野白梅町 御室仁和寺・山越行き]
乗車バス停:京都駅前[乗り場D3]
降車バス停:妙心寺北門前
運賃:230円
所要時間:約42分


河原町駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「四条河原町 乗り場A(南行き)」から京都市バス「10系統」に乗車、「妙心寺北門前」で下車。

バス会社:京都市バス
行先・系統:10系統[北野天満宮 御室仁和寺・山越行き]
乗車バス停:四条河原町[乗り場A 南行き]
降車バス停:妙心寺北門前
運賃:230円
所要時間:約43分


祇園四条駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「四条京阪前 乗り場C」から京都市バス「10系統」に乗車、「妙心寺北門前」で下車。

バス会社:京都市バス
行先・系統:10系統[北野天満宮 御室仁和寺・山越行き]
乗車バス停:四条京阪前[乗り場C]
降車バス停:妙心寺北門前
運賃:230円
所要時間:約40分


タクシーで行く場合

京都駅から:約3,000円(約20分)

京阪 祇園四条駅から:約2,800円(約15分)

・タクシー運転手に行き先を告げたい場合

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・タクシーを呼びたい場合

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[タクシー配車連絡先: 京都駅周辺]

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いかがでしたか?

それでは楽しい旅を!