善水寺(ぜんすいじ)は、滋賀県湖南市にある天台宗(てんだいしゅう)の寺院です。
飛鳥時代から奈良時代にかけての和銅年間(708-715)、元明天皇(げんめいてんのう)の勅願により開かれました。
「仏法(ぶっぽう)により、国家を守護し安寧を祈願する。」
昔から日本に根付くこの「鎮護国家(ちんごこっか)」の思想道場としての歴史を持つこの善水寺は、奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから、近年は近隣の長寿寺(ちょうじゅじ)、常楽寺(じょうらくじ)と共に「湖南三山(こなんさんざん)」の一角とも称されています。
そんな善水寺の見どころは、「国宝の本堂に祀られている、見事な仏像群」!
本堂内陣の須弥壇(しゅみだん)に並べられた仏像群は、まさに見る者を圧倒する存在感を放ちます!
今回はそんな善水寺を訪れてみました。
善水寺の歴史
では、まずはじめに善水寺の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
善水寺の歴史は古く、寺伝によると飛鳥時代から奈良時代にかけての和銅年間(708-715)の創建と言われます。
元々は、当時の女帝であった元明天皇(げんめいてんのう)の勅願により「鎮護国家(ちんごこっか)」の思想道場として開かれます。
創建当初は、お寺の創建時の年号を取り「和銅寺(わどうじ)」と呼ばれていました。
今回はこのお寺が、その後なぜ今の「善水寺(ぜんすいじ)」と称されるようになったのかについて見て行きたいと思います!
お寺の改名に関係が深かった人物こそ、天台宗の開祖である伝教大師・最澄(さいちょう)。
最澄が近隣の比叡山に天台宗の総本山である延暦寺(えんりゃくじ)を創建したのが、平安時代の788年のこと。
その2年後の790年、最澄はこのお寺の近くで延暦寺のお堂を建てるための資材を探していました。
最澄「延暦寺のお堂を建てる木材が足りへん!ここらの山からもらおうかな!」
しかしその時代、大きな木材を運ぶのは大変な作業。
近くの野洲川(やすがわ)に流して運ぼうとしましたが、いかんせん水量が少なかったと言います。
最澄「あかん!木材を浮かべる水量がこの川にはないやん!どないしよ!」
しかしそこは天台密教の祖であり法力最強と謳われた最澄さん、お得意の雨乞いの儀式で川の水量を増やそうと試みることに。
そこで選ばれた祈祷の地こそが、このお寺にある百伝池(ももつてのいけ)だったんです。
最澄「よっしゃ!いっちょ雨乞いで川の水を増やしたろか!」
最澄「なんや近くに祈祷にぴったりの綺麗な池があるから、そこでやったろ!」
そんなこんなで祈祷を始めたところ、何と池から黄金色に輝く薬師如来(やくしにょらい)が出現!
その薬師如来に願ったところ雨が降り続き、無事に川から木材を運べるようになったんだとか。
最澄「南無南無!アメヲフラセタマエー!」
薬師如来「呼ばれて飛びでてじゃじゃじゃじゃーん。雨なんてお安い御用じゃぞ。」
どざざざざー(大雨)。
最澄「うおぉお、さすが薬師如来さま!頼りになります!」
そんな縁があったため、最澄はこのお寺を天台宗へと改宗しこの薬師如来をご本尊にお迎えしました。
(ちなみに延暦寺(えんりゃくじ)のご本尊も、この善水寺と同じ薬師如来です。)
閑話休題。
薬師如来といえは、本来はその名の通り「薬師=病気を平癒」するご利益を持つ仏様です。
そんな薬師如来が出現したこのお寺の池の水は、「飲めば病気がたちまち快復する!」という霊水として有名なります。
当時の桓武天皇(かんむてんのう)が病で倒れた際には、最澄が薬師如来に祈ったこのお寺の水を献上することであっという間に快復したんだとか!
桓武天皇「うおぉ、頭痛いお腹痛い動けない。ワシもうあかんのとちゃうやろか…?」
最澄「そんな悩みを持つあなたにこそ!この薬師如来さまの霊力が宿ったお水を飲んだら大丈夫!」
最澄「沢山の病人がこ効果を実感しています!今なら同じお値段でもう一本!」
桓武天皇「なんやどこぞのテレビショッピングみたいやけど大丈夫なんやろか…?」
ごくごく。
桓武天皇「うぉおお、何か体が元気になってきた!」
最澄「これらの体験談はあくまで利用者の個人の感想であり、その効果を保証するものではありません。」
桓武天皇「ん?何を言っとるんや?」
最澄「いえいえ、遠い未来では薬機法や景品表示法がうるさいので…。」
桓武天皇「お…おぉ。まぁ治ったからええわ!」
こうしてこのお寺の水のお陰で病気が全快した桓武天皇は、そのお礼として「善き水が湧き出るお寺=善水寺」という寺号をこのお寺に贈ったんだとさ。
その後は天台宗の道場として永く栄えましたが、戦国時代の1571年に織田信長(おだのぶなが)により比叡山焼き討ちを敢行したその足で攻め込まれて境内を蹂躙されます。
そのため境内の建物は、この焼き討ちで奇跡的に難を逃れた本堂を除き後世に復元されたものなんですね。
おしまい。
湖南三山について
この善水寺は、奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから近隣の長寿寺(ちょうじゅじ)、常楽寺(じょうらくじ)と共に「湖南三山(こなんさんざん)」と呼ばれています。
これら湖南三山の境内は、それぞれが滋賀県が誇る紅葉の名所としても有名です。
善水寺を訪れる際には、ぜひその他二つの寺院も訪れてみてください!
善水寺について
お寺の詳細
住所:〒520-3252 滋賀県湖南市岩根3518
連絡先:0748-72-3730
創建:和銅年間(708-715)
開基:元明天皇(げんめいてんのう)
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
ご本尊:薬師如来(やくしにょらい)
拝観時間
3月~10月 | 9:00~17:00 |
11月~2月 | 9:00~16:00 |
拝観料
大人 | 500円 |
中高生 | 300円 |
小学生 | 無料(保護者の同伴が必要) |
お寺のWebサイト
その他注意点
・上記情報は2019年11月に訪れた際のものであり、変更されている可能性があります。
・法要の時間は、本堂内陣に入れない場合があります。
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、善水寺の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
善水寺の見どころ
「*印」のついている見どころは有料エリアです。
善水寺の最寄り駅はJR草津線 甲西(こうせい)駅ですが、駅からは約3.5kmあり徒歩だと1時間ほどかかります。
甲西駅北口から善水寺の最寄りの岩根バス停まで「湖南市コミュニティバス」が運行していますので、バスかタクシーを利用して行きましょう。
コミュニティバスの路線は「下田線(甲西駅ルート)」です。
最寄りのバス停からは、徒歩約20分(600m)ほどの距離があります。
コミュニティバスは1時間に1本ほど、休日は運休する時間帯もあるため時刻表を確認してからお出かけしましょう!
■湖南市コミュニティバス「下田線(甲西駅ルート)」の時刻表
岩根バス停から善水寺までの道のりでは、後半部分は未舗装の山道を歩くことになります。
なるべく動きやすい服装、歩きやすい靴で行かれることをお勧めします。
最寄りのバス停から歩くこと約20分で、無事善水寺に到着しました!
善水寺の入り口前には50台ほど駐車が可能な大きな駐車場がありますので、自家用車で行っても安心ですよ!
参拝者は無料で駐車場を利用可能です。
では早速、入り口から境内にお邪魔したいと思います!
鐘楼堂*
入口から境内に入るとすぐ左手に、江戸時代の1663年に建立された鐘楼堂(しょうろうどう)が見えてきました。
元三大師堂*
鐘楼堂の反対側には、江戸時代の1713年に再建された元三大師堂(がんざんだいしどう)が佇んでいました。
元三大師(がんざんだいし)とは、あの比叡山延暦寺(えんりゃくじ)の中興の祖として知られる第18代天台座主の良源(りょうげん)禅師のこと。
こちらには、良源禅師の等身大の木像が祀られていました。
本堂【国宝】*
元三大師堂から境内を振り返ると、そこには重厚かつ凛とした佇まいの大きな木造建築がどどんと鎮座しています。
こちらが南北朝時代の1366年に再建された、入母屋造(いりもやづくり)の国宝の本堂(ほんどう)です。
なお入り口側から見る本堂は、その側面となります。
境内を左手に回り込み、本堂を正面から捉えてみました。
一部屋根の檜皮葺が荒れており銅板にて補修されていましたが、その堂々たる佇まいはさすが国宝、素晴らしいものでした!
こちらの建物は、神社仏閣の建築によく見る前に長く伸びた向拝(こうはい)を持たないため、より一層屋根の大きさとその存在感が際立っているように見えますね。
本堂内部の須弥壇(しゅみだん)には、このお寺最大の見どころである実に30を超える仏像が!
ご本尊の薬師如来(やくしにょらい)は秘仏のため拝見することはできませんでしたが、薬師如来を奉じる厨子(ずし)の上段には仏教守護の天部・梵天 (ぼんてん)と帝釈天(たいしゃくてん)が。
また中段には四天王(してんのう)が脇を固め、下段には薬師如来を守護する十二神将(じゅうにしんしょう)が所狭しと並べられていました!
まさに瑠璃光浄土(るりこうじょうど)や須弥山(しゅみせん)などの、仏教の世界観を一度に垣間見ることが出来るかのような光景でした。
こうした光景は京都の名のあるお寺でもなかなか見ることが出来ないので、かなり貴重かつおすすめの空間です!
本堂内陣の写真や動画の撮影は禁止ですので、写真は2015年に配られたJR西日本のパンフレットから引用させて頂いています。
それでは本堂内陣から外に出て、引き続き境内を散策してみたいと思います!
庭園*
本堂の手前には大きな池が中央に配された、池泉回遊式の見事な庭園が広がっていました!
ちなみにこの池こそが、お寺の歴史でも触れた、最澄がご本尊の薬師如来を見つけたとされる百伝池(ももつてのいけ)であり、桓武天皇の病気を治した霊水が湧き出た場所なんです。
百伝弁才天*
百伝池の中島には、弁財天(べんざいてん)を祀る百伝弁財天(ももつてべんざいてん)社がひっそりと佇んでいました。
善水元水*
百伝池のほとりには、病気を治癒するとされる霊水が現在もこんこんと湧き出ている場所があります。
薬師如来の御利益があるこの霊水は、現在誰でも自由に汲んで持ち帰ることが出来ますのでぜひ水筒などを持参しましょう。
写真にある汲み取り用のペットボトルを本堂で頂けますので、そちらを利用されてもOKです。
(ペットボトルの利用は志納なので、お気持ちのお金をお寺に納めましょうね。)
六所権現社*
霊水が湧き出る場所から一段高い所には、六所権現社(ろくしょごんげんしゃ)が鎮座しています。
この善水寺の鎮守社とのことで、伊勢、春日、八幡、賀茂、熱田、鹿島の六社におられる神様を合祀しています。
行者堂*
六所権現社から更に先、善水寺境内の一番高い場所まで登っていくと見えてくる建物が行者堂(ぎょうじゃどう)です。
修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)を祀るお堂であり、この地域に昔から山岳信仰が根付いていることを示していますね。
今でもお炊き上げをされているのでしょうか、前方の護摩壇には使われた跡が残っていました。
これで、善水寺の有料拝観場所の見どころを見て回ることが出来ました。
では続いて、境外にある見どころを少し散策してみましょう!
観音堂
善水寺の駐車場を出て、最寄りのバス停に戻る途中の山道にポツンと佇んでいる建物が江戸時代の1696年に建立された観音堂(かんのんどう)です。
ここにはもともと岩蔵坊(いわくらぼう)という僧房があったそうですが、その跡地に聖観音(しょうかんのん)を祀るため建立されたんだとか。
善水寺僧房跡
善水寺にはかつて天台宗の一大道場として栄えた歴史があり、全部で26もの僧房があり100人を超える僧侶が修行をしていたんだとか。
この僧房の跡地が、善水寺の近辺の山手の至る所に残されています。
これで善水寺の主な見どころを全て見ることが出来ました!
訪問の感想としては国宝の本堂の外観はもちろん、その内部に納められている仏像群が見事でした!
先ほども書きましたが、浄土(じょうど)や須弥山(しゅみせん)、それに関連する様々な仏像を一同に垣間見れる空間は、この滋賀県はおろか京都でもあまり例を見ないほどレアなものだと思います。
しかも京都と比べて空いていてゆっくり見学できるので、仏像マニアさんは特に必見かと!
皆さんも是非行ってみてくださいね!
善水寺の紅葉
善水寺の動画
善水寺の写真
善水寺の御朱印
善水寺では、ご本尊の薬師如来(やくしにょらい)の御朱印を頂きました。
御朱印は本堂で頂くことが出来ます。(300円)
善水寺への行き方/アクセス方法
最寄り駅はJR草津線 甲西(こうせい)駅です。
甲西駅からは約3.5kmあり徒歩だと1時間ほどかかるので、駅からは湖南市コミュニティバスかタクシーを利用しましょう。
大阪駅から甲西駅へのルート例(電車)
①JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「甲西駅」へ。
なんば駅から甲西駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。
②JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
③JR草津線で「草津駅」から「甲西駅」へ。
京都駅から甲西駅へのルート例(電車)
①JR琵琶湖線で「京都駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線へ乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「甲西駅」へ。
甲西駅から湖南市コミュニティバスを利用して行く場合のルート例
「甲西駅北口バス停」から湖南市コミュニティバス「下田線(甲西駅ルート)」もしくは「ひばりヶ丘線」に乗車、「岩根(善水寺)バス停」で下車。
バス会社:湖南市コミュニティバス
行先・系統:下田線(甲西駅ルート)/ひばりヶ丘線
乗車バス停:甲西駅北口
降車バス停:岩根(善水寺)
運賃:250円
所要時間:約8分
タクシーで行く場合
草津駅から:約4,400円(約30分)
石部駅から:約1,600円(約10分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
・タクシー配車連絡先(草津駅周辺)
・タクシー配車連絡先(甲西駅周辺)
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!