浄住寺(じょうじゅうじ)は、京都市西京区にある黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院です。
日本仏教、特に密教の発展に関して多大な貢献をしたとされる嵯峨天皇(さがてんのう)。
この浄住寺はそんな嵯峨天皇の勅願により平安時代の810年ごろに建立されたお寺を起源とし、歴史上数度の改宗の末に現在は黄檗宗の禅寺としての歴史を紡ぎます。
そんな浄住寺の見どころは「自然豊かで静かな境内と、秋の紅葉」!
風光明媚な景勝地「嵐山」からほど近い場所にあるにも関わらず、その境内は昔ながらの静けさと荘厳さを今に保っています。
また、近年は京都嵐山近辺の紅葉の穴場としても知られるようになってきました。
今回はそんな浄住寺を訪れてみました。
浄住寺の歴史
では、まずはじめに浄住寺の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
平安時代初期の第52代天皇であった嵯峨天皇(さがてんのう)。
この嵯峨天皇は国家鎮護のため、天台宗宗祖・最澄(さいちょう)の悲願だった大乗戒壇(だいじょうかいだん)を許可したり、真言宗の宗祖・空海(くうかい)に東寺(とうじ)を与えたりと、とにかく仏教と縁の深い天皇でした。
この浄住寺はそんな嵯峨天皇の勅願により、慈覚大師・円仁(えんにん)を開山とし平安時代初期の810年に天台宗の寺院として創建されました。
今回はこの浄住寺の創建に由来する、伝説的なお話を一つ見て行きたいと思います!
その伝説の主人公は、韋駄天(いだてん)。
仏教を守護する天部(てんぶ)に属し、一般的には「めっちゃ足が速い神様!」として知られていますね。
ではなぜこの韋駄天は「足が速い!」と言われているのかご存知ですか?
それははるか昔、お釈迦様が入滅(にゅうめつ)されたときのお話。
捷疾鬼(しょうしつき)という足の速さが自慢の鬼が、あろうことかお釈迦様の遺骨の一部を盗んで逃げてしまったんだそうです。
捷疾鬼「うはは!釈迦の骨を盗めば鬼の世界で俺は有名人になれるぜー!」
天部たち「何てことを!返しなさーい!」
捷疾鬼「やなこったー!追いつけるもんなら追い付いてみやがれー!ぴゅーん。」
そんなこんなで、頑張って132万kmも離れた須弥山(しゅみせん)の麓まで逃げたんだそうな。
捷疾鬼「ふふふ、ここまで逃げればもう大丈夫やろ!」
しかし、すでにそこには鬼の素早さをはるかに上回る韋駄天の姿が!
韋駄天「おぉ、遅かったな!わし一瞬で先回りしといたで!御用や!」
捷疾鬼「なん…やと…!?そんなアホな…、自信無くすわ…。ぐすん。」
てことで韋駄天さん、鬼が頑張って逃げた132万kmの逃避行を一瞬で追い付いて鬼の心をバッキバキに折りましたとさ。
(ちなみにこの心を折られた捷疾鬼、その後は改心して毘沙門天(びしゃもんてん)の眷属となり仏教を守護する側として活躍します。)
そしてここからが本題。
この韋駄天さんが取り返したとされるお釈迦様の遺骨の一部が、なんとその後日本に渡り嵯峨天皇の手元に来たんだとか。
嵯峨天皇は「これは大事に保管せねば!」ということでこの浄住寺を創建、寿塔(じゅとう)の下にある石窟にその遺骨を大事に納めたんだとか。
因みにこのストーリー、あの文学超大作の「太平記(たいへいき)」にも記されているそうです。
閑話休題。
平安時代後期になるとお寺は荒廃するも、鎌倉時代の1261年に当時の公卿であった葉室定嗣(はむろさだつぐ)により西大寺の叡尊(えいそん)を呼び、真言律宗の寺院として復興し長く繁栄したと言われます。
因みにこのお寺の山号である「葉室山(はむろさん)」は、この葉室氏の菩提寺であったことに由来します。
室町時代以降は応仁の乱などによってなかなか復興出来ずにいましたが、江戸時代の1689年に黄檗宗の禅僧・鉄牛道機(てつぎゅうどうき)によりようやく復興し、現在に至ります。
ということでこのお寺さま、幾度の荒廃により「天台宗」→「真言律宗」→「黄檗宗」と三度も宗派が変わっているお忙しい歴史を持たれているんですね。
おしまい。
浄住寺について
この浄住寺は、近年は秋の紅葉シーズン(11月~12月)の一部期間を有料の特別拝観期間とされており、本堂や方丈の内部が解放されます。
上記以外の期間は、山門が開いていれば境内を無料で自由に拝観できます。
お寺の詳細
住所:〒615-8276 京都府京都市西京区山田開キ町9
連絡先:075-381-6029
創建:810年
開基(黄檗宗):鉄牛道機(てつぎゅうどうき)
宗派:黄檗宗(おうばくしゅう)
ご本尊:釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)
拝観時間(特別拝観期間)
9:00~16:30(16:00受付終了)
拝観料(特別拝観期間)
中学生以上 | 600円 |
小学生 | 300円 |
その他注意点
・上記情報は2019年12月に訪れた際のものであり、変更されている可能性があります。
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、浄住寺の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
浄住寺の見どころ
「*」のついている見どころは、特別拝観期間にのみ公開されるエリアです。
(秋の紅葉シーズンは、境内全体が有料エリアとなる場合があります。)
浄住寺の最寄り駅は阪急嵐山線 上桂(かみかつら)駅で、駅からは約800m(徒歩15分)の距離にあります。
今回私は上桂駅から徒歩で向かいました。
今回伺う浄住寺は昔は知る人ぞ知る隠れた紅葉の名所だったんですが、2017年より毎年秋の特別拝観が行われるようになったため一気にその人気が出始めています!
阪急電車の桂駅や上桂駅にも、特別拝観のお知らせポスターが沢山貼られていてびっくり!
とはいえ、嵐山の喧騒と比べるとまだまだ静かに拝観が出来るのでおすすめの場所です。
浄住寺は住宅地の少し奥まった分かりにくい場所にあるのですが、秋の特別拝観時には駅からお寺への道筋に大きな看板も出るようになりました!
詳細な行き方は後述の「浄住寺の行き方/アクセス方法」にまとめていますのでご参照くださいね。
入り組んだ住宅街を歩くこと約15分、目的地の浄住寺に到着しました!
うーん、今年はちょっと紅葉の進み具合が早かったらしく12月初旬で既に散り紅葉でした。
ちなみに浄住寺の手前には専用の駐輪場が用意されていましたので、レンタサイクルなどで訪れるのも良いですね!
ただし駐車場は無く近くにコインパーキングも少ないため、車やタクシーでの訪問は控えましょう。
では早速境内にお邪魔したいと思います!
山門
境内の入り口には、石柱で出来たお寺の山門(さんもん)がどどんとそびえています。
石柱には文字が彫られており、恐らくは禅に関する何らかの格言だとは思うのですが良く分かりませんでした。
ご存知の方はぜひ教えてくださいませ。
参道
境内に入ると、本堂まで一直線に伸びる参道が出迎えてくれます。
参道の両脇には背の高いモミジがあるため、秋になると紅葉の回廊になります。
私が訪れた際は既に紅葉の終盤だっため散り紅葉となっていましたが、これはこれで風情ある光景でした。
本堂
参道の突き当りにある建物が、本堂(ほんどう)です。
江戸時代の1697年の再建で、京都市指定・登録文化財です。
本堂の扁額には大きな「祝國」の文字が見て取れました。
このお寺の黄檗宗としての中興の祖である鉄牛道機(てつぎゅうどうき)の筆なんだとか。
中国ゆかりの禅の教えである黄檗宗らしく、本堂の外観はどことなく中国風の雰囲気を醸し出していました。
本堂には黄金色に輝くご本尊の釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)の座像をはじめ、過去にこのお寺が天台宗、真言律宗であった名残の仏像などが多数祀られています。
本堂の内部は特別拝観期間にのみ公開されます。
本堂内部の写真撮影は禁止でしたので、画像は頂いたパンフレットから引用させて頂いています。
位牌堂・開山堂・寿塔*
本堂の裏手には位牌堂(いはいどう)、開山堂(かいざんどう)、寿塔(じゅとう)が一直線に並んで建てられています。
このような配置は、黄檗宗が日本に伝来した際の中国の明(みん)時代末期頃の様式を取り入れているんだとか。
各建築物の位置取りを分かりやすく見てみると、このようなイメージです。
位牌堂には本寺に関連のある位牌、開山堂には中興の祖である鉄牛道機(てつぎゅうどうき)の像が祀られており、本堂の内部からその内側を覗くことが出来ました。
寿塔は非公開で中を見ることはできませんでしたが、「浄住寺の歴史」で書いた通りその内部には韋駄天が鬼より取り戻したとされるお釈迦様の遺骨の一部が納められているんだとか。
(写真は方丈の庭園側から撮影したものです。)
方丈*
本堂から境内を右手に進むと、方丈(ほうじょう)が見えてきます。
伊達政宗(だてまさむね)の曾孫にあたる、第四代の仙台藩主・伊達綱村(だてつなむら)が幼少の頃に過ごしたお屋敷をこの地に移築したものなんだとか。
伊達綱村が幼いころの伊達家は、伊達騒動(だてそうどう)と言われるお家騒動の真っ最中。
そのためこのお屋敷の奥座敷の壁には子供を逃がすことが出来る抜け穴(武者隠し)があるなど、さながら忍者屋敷のようなカラクリが興味深い建物でした。
方丈の客間には、京狩野派の重鎮・狩野永岳(かのうえいがく)筆の雲龍図の衝立が展示されていました。
年季が入っておりくすんでいますが、作成当初は総金箔張りの超ゴージャスな衝立だったんだとか!
方丈内部の写真撮影は禁止でしたので、画像は頂いたパンフレットから引用させて頂いています。
(方丈内部は特別拝観期間にのみ公開されます。)
方丈庭園*
方丈の客間からは、方丈庭園(ほうじょうていえん)が一望できる造りになっていました。
元武家屋敷であった名残で方丈の縁側はウグイス張り、歩くと「キュッキュッ」という警戒音が鳴る仕組みです。
方丈庭園は、禅宗のお寺さまらしく簡素な造りの池泉庭園です。
スタッフさんにお聞きしたところ、池の中央、石橋の先にある中の島にポツンと置かれている石はその昔韋駄天が鬼から取り戻したとされるお釈迦様の遺骨の一部を表現しているんだとか。
観音堂
方丈とは逆側、本堂から左手の境内奥には観音堂(かんのんどう)がひっそりと佇んでいました。
京都洛西観音霊場(きょうとらくさいかんのんれいじょう)の第三十番札所として、聖観音(しょうかんのん)が祀られています。
四宮社
観音堂の右手には八幡大菩薩、若宮八幡大菩薩、天照大神、春日大明を合祀する祠が建てられていました。
お寺の鎮守社としての役割を担っているのでしょう。
弁天堂
境内の一番奥には、小さな弁天堂(べんてんどう)がありました。
こちらには八本の腕に武器を持ち、武運長久や勝運のご利益で知られる八臂弁財天(はっぴべんざいてん)が祀られています。
亀甲竹
参道の脇道には、亀甲竹(きっこうちく)と呼ばれる竹が自生していました。
その名の通り節の模様が亀の甲羅のような形をしている面白い竹で、日本で良く見られる孟宗竹(もうそうちく)の突然変異種なんだそうです。
京都では京銘竹(きょうめいちく)と言う伝統工芸品があり、この亀甲竹を火であぶって磨いたものは特に高級な竹材として珍重されているんだとか。
これで、浄住寺の主な見どころを全て見ることが出来ました!
昔は紅葉の時期でさえも殆ど観光客が訪れることが無かった浄住寺さんですが、特別拝観が始まったことによって一気に知名度が上がりましたね。
以前と比べて、この浄住寺を嵐山近辺の紅葉の穴場として訪れる方も増えてきているんだそうです。
何だかんだで京都にはもう穴場と呼べる紅葉の名所やお寺は無くなりつつありますが、それでもあの嵐山の混雑ぶりを考えると、この浄住寺さんはまだまだゆっくりと紅葉や境内散策を楽しめる貴重な場所です。
皆さんも是非行ってみてくださいね!
浄住寺の紅葉
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浄住寺の動画
浄住寺の写真
浄住寺の御朱印
浄住寺では、京都洛西観音霊場(きょうとらくさいかんのんれいじょう)の第三十番札所としての「大悲観世音菩薩(だいひかんぜおんぼさつ)」の御朱印を頂きました。
御朱印は方丈で頂くことが出来ます。(300円)
浄住寺への行き方/アクセス方法
最寄り駅は阪急嵐山線 上桂(かみかつら)駅です。
京都駅や烏丸駅からバスで行くことも出来ますが、京都駅発の京都バスは混雑する嵐山を通過するルートとなるため、バスを利用する場合は烏丸駅から京都市バスを利用して行かれることをお勧めします。
大阪梅田駅から上桂駅へのルート例(電車)
①阪急京都線で「大阪梅田駅」から「桂駅」へ行き、阪急嵐山線に乗り換え。
②阪急嵐山線で「桂駅」から「上桂駅」へ。
なんば駅から上桂駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、阪急京都線に乗り換え。
②阪急京都線で「大阪梅田駅」から「桂駅」へ行き、阪急嵐山線に乗り換え。
③阪急嵐山線で「桂駅」から「上桂駅」へ。
京都駅から上桂駅へのルート例(電車)
①京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から「四条駅」へ行き、阪急京都線に乗り換え。
②阪急京都線で「烏丸駅」から「桂駅」へ行き、阪急嵐山線に乗り換え。
③阪急嵐山線で「桂駅」から「上桂駅」へ。
上桂駅からの徒歩ルート例
徒歩約15分(800m)です。
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京都駅からバスに乗る場合
「京都駅前 乗り場C6」から京都バス「73系統(嵐山・苔寺すず虫寺行き)」に乗車、「苔寺・すず虫寺」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:73系統[嵐山・苔寺すず虫寺行き]
乗車バス停:京都駅前[乗り場C6]
降車バス停:苔寺・すず虫寺
運賃:230円
所要時間:約56分
烏丸駅からバスに乗る場合
「四条烏丸バス停E乗り場」から京都市バス「29系統(洛西バスターミナル行き)」に乗車、「松尾大利町」で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:29系統[洛西バスターミナル行き]
乗車バス停:四条烏丸バス停E乗り場
降車バス停:松尾大利町
運賃:280円
所要時間:約34分
タクシーで行く場合
京都駅から:約3,100円(約20分)
京阪 祇園四条駅から:約3,300円(約20分)
阪急嵐山駅から:約1,200円(約10分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
・タクシー配車連絡先(京都駅周辺)
・タクシー配車連絡先(阪急嵐山駅周辺)
浄住寺周辺のホテル検索/予約
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!