三千院/三千院門跡(さんぜんいん)は、京都市左京区大原にある天台宗の門跡寺院です。

天台宗の開祖・最澄(さいちょう)が平安時代初期に比叡山に僧房を建てたことが起こりとされ、天台宗本山である比叡山延暦寺のお膝元で1200年以上もの歴史をつむいできた古刹です。

そのため、天台宗の中でも格式が高い寺院として「天台宗三門跡/五門跡」の一つにも数えられているんですね!

「きょうと~ おおはら さん・ぜん・いん♪♪」

三千院と言えばこのフレーズ。

デューク・エイセスさんが歌った有名な京都ご当地ソング、「女ひとり」の歌詞にいち早く出るお寺としても有名ですね。

京都北部の大自然に囲まれた大原の地にある三千院は、初夏の新緑や緑、秋の紅葉の名所としても有名です。

そんな三千院の見どころは「苔むす庭園と国宝の阿弥陀三尊」!

前かがみに正座する珍しい「大和坐り(やまとすわり)」の脇侍を持つ阿弥陀如来像は、2002年にめでたく国宝に指定されました!

今回は、そんな三千院/三千院門跡を訪れてみました。


三千院の歴史

では、まずはじめに三千院/三千院門跡の「歴史」「訪問する際に知っておきたいポイント」を一緒に見て行きましょう!


三千院-参道の石碑
三千院-参道の石碑

三千院/三千院門跡は、平安時代の延暦年間(782‐806)に天台宗の開祖・最澄(さいちょう)が比叡山に興した「円融房(えんゆうぼう)」という僧房がその起源です。

日本仏教の総合大学とも言われる天台宗(てんだいしゅう)

三千院は数ある天台宗の寺院の中でも特に格式が高いとされ、青蓮院(しょうれんいん)妙法院(みょうほういん)と共に「天台宗三門跡(てんだいしゅうさんもんぜき)」の一つに数えられます。

(上記に毘沙門堂(びしゃもんどう)曼殊院(まんじゅいん)を加えて「天台宗五門跡(てんだいしゅうごもんぜき)」という場合もあります。)


三千院-歴史を刻むこま札
三千院-歴史を刻むこま札

平安時代後期になると、現在の滋賀県大津市あたりに「梶井宮(かじいのみや)」という僧房が建てられ、三千院の本拠もそこに移ることになります。

そして1118年、その僧坊に堀川天皇(ほりかわてんのう)の皇子・最雲法親王(さいうんほっしんのう)が入寺して以来、三千院は門跡としての歴史を歩むことになりました。

そのため、お寺の名前も「梶井門跡(かじいもんぜき)」と称されることに。

この梶井門跡の時代、お寺の仏堂には「一念三千院(いちねんさんぜんいん)」という名前が付けられていました。

その後お寺は応仁の乱などより京都を転々とし、明治時代の1871年にようやくこの大原の地に落ち着くこととなりました。

この際、梶井門跡の仏堂名であった「一念三千院」の名称を基として正式に「三千院(さんぜんいん)」という名前になりました。

三千院には1200年以上の歴史がありますが、三千院と呼ばれるようになったのは実はつい最近のことなんですねー。


三千院-御殿門に掲げられる菊花紋
三千院-御殿門に掲げられる菊花紋

ちなみになぜ「三千院」なのでしょうか?

「二千院」や「四千院」じゃダメだったんでしょうか?

はい、「三千院」じゃないとダメなんです。

実は、この「三千」という文字は「一念三千(いちねんさんぜん)」という天台宗の大事な教えから来ています。

仏教の世界観では、全宇宙は「1000(小千世界)×1000(中千世界)×1000(大千世界)の世界」で出来ているとされます。

これをぎゅっとまとめて「三千世界(さんぜんせかい)」と呼んだりもします。

てことで上記の言葉には、

「私たちの心の中には全宇宙のすべての真理がつまってるんだぜ!すげえな!」

「だからこそ修行してちゃんと自分をかえりみないとな!」

的な意味があるんです。(超おおざっぱです。)

てことで、このお寺の名前も「二千院」でも「四千院」でもなく、「三千院」じゃなきゃダメ!なんですね。

おしまい。

三千院について

お寺の詳細

住所:〒601-1242 京都府京都市左京区大原来迎院町540
連絡先:075-744-2531
創建:延暦年間(782-806)
開基:最澄(さいちょう)
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
本尊:薬師如来(やくしにょらい)

拝観時間

季節により少しだけ異なります。

時期 拝観時間
3月~10月 9:00~17:00
11月 8:30~17:00
12月~2月 9:00~16:30

拝観料

大人 中高生 小学生
700円 400円 150円

その他注意点

・建物内部や仏像等は、写真撮影禁止です。(必ず係員の指示に従いましょう。)

・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてください。


三千院のパンフレット

では次に、三千院/三千院門跡の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!


三千院の見どころ

「*」のついている見どころは有料エリアです。

御殿門

三千院の御殿門

まずは入り口にある御殿門(ごてんもん)をくぐり、境内に入ります。

門構えを取り囲むまるで城壁のような重厚な石垣は、穴太衆(あのうしゅう)という近江の石工により組まれたんだとか。

門跡寺院らしく、皇室ゆかりの菊花紋のお出迎えですね!

開門時間前に到着したので、誰もいないどころか門すら空いていないと言う・・・(笑)

庫裏*

三千院の庫裏

開門時間まで待って、受付がある庫裏(くり)に向かいます。

ここから先の拝観は有料となります。

中書院*

三千院-中書院の坪庭

庫裏の玄関から建物の中に入り、中書院(ちゅうしょいん)を経て客殿の方へ向かいます。

途中、綺麗に手入れされた坪庭がありました。

昔の建物は、こうして内部にも目を楽しませ心和ませてくれる空間があるのが素敵ですね。


三千院の中書院

こちらは中書院の外観です。

奥に連なる建物は客殿です。

客殿*

三千院-客殿から庭園を眺める

中書院の内部を進み客殿(きゃくでん)に入ると、大きな畳敷きの広間に通されます。

広間からは、客殿の庭園を一望できます!

さすがは要人を通す客殿、目の肥えた人も飽きさせない見事な景色ですね。


三千院-客殿の外観

こちらは客殿の外観です。

江戸時代の旧御所の建材が利用されており、大正時代の1912年(大正元年)に修復補修がなされたとのこと。

大きな唐破風(からはふ)の屋根が存在感ある玄関ですね!

聚碧園*

三千院の聚碧園01

客殿の庭園は、聚碧園(しゅうへきえん)と呼ばれる池泉庭園です。

この素晴らしい庭園を見て、室町時代の歌僧・頓阿(とんあ)はこう詠んだとか。

「見るたびに 袖こそ濡るれ 桜花 涙の種を 植えやおきけん」

何とも、もの悲しい歌ですね。

そのため、庭園奥にある桜は「涙の桜(なみだのさくら)」と呼ばれているんですよ。


三千院の聚碧園02

庭園は、江戸時代の茶人である金森重近(かなもりしげちか)による作庭。

この方は、茶道・宗和流(そうわりゅう)の開祖で「金森宗和(かなもりそうわ)」という号でも知られる茶人です。

時期によっては、実際にこの赤じゅうたんにて茶席のおもてなしを受けることができますよ!

宸殿*

三千院の宸殿

客殿を進むと、次に見えてくるのが宸殿(しんでん)です。

大正時代の1926年に御所の紫宸殿(ししんでん)を模して建立されました。

ご本尊の薬師如来(やくしにょらい)を祀りますが、秘仏のため基本的にお目にかかることはできません。

主な法要が執り行われる場所で、朝早い時間に行くとお坊さんの熱心なお経を唱える姿を見ることができますよ。

有清園*

三千院の 有清園01

宸殿の前面には一面に見事な苔が配された池泉回遊式の庭園、有清園(ゆうせいえん)が広がります!

この名前は、中国の六朝時代を代表する詩人の謝霊運(しゃれいうん)が詠んだ山水詩、「山水清音有(山水に清音あり)」という一節に由来します。


三千院の 有清園02

庭園の北方には大きな弁天池があり、その周囲を散策できる池泉回遊式の庭園です。


三千院-有清園の紅葉

春から夏にかけては新緑と苔、秋には見事な紅葉の風景が広がり、本当に見る者を飽きさせない庭園です。

是非色々な季節に訪れて、四季の移り変わりを楽しんでみてください!

往生極楽院【重要文化財】*

三千院の往生極楽院

有清園を進むと見えてくるのが、重要文化財の往生極楽院(おうじょうごくらくいん)

平安時代の建立と伝えられ、国宝の阿弥陀三尊(あみださんぞん)を祀ります。


三千院の阿弥陀三尊
写真は三千院のパンフレット記載のものより引用しています。

中央の阿弥陀如来の大きさもさることながら、両脇の勢至菩薩/観音菩薩が「大和坐り(やまとすわり)」という前かがみに正座する姿が印象的ですね!

朱雀門*

三千院の朱雀門

往生極楽院を進むと、朱に塗られた朱雀門(すざくもん)が見えてきます。

朱雀は、四神(ししん)の中で南を守護する霊獣。

そのため、この門は往生極楽院や宸殿の南側に位置します。

わらべ地蔵*

三千院のわらべ地蔵

朱雀門近くの苔庭からは、わらべ地蔵がじーっとこちらを見つめています。

そもそも地蔵菩薩(じぞうぼさつ)は、閻魔大王(えんまだいおう)の化身であり「子供の守り神」

親より早く亡くなった子供が行く「賽の河原(さいのかわら)」。

ここで子供は「石を延々と積む苦行」をしますが、積み終わると鬼によって崩されてしまいます。

こうした理不尽な試練から子供を救ってくださるのが地蔵菩薩。

このように、地蔵菩薩は子供と接する機会が多いので、自身もこうしたあどけない姿で見守ってくれているのかも知れませんね。

弁財天*

三千院の弁財天

境内北側を進んでいくと、弁財天(べんざいてん)が見えてきました。

言わずもがな七福神(しちふくじん)の一尊ですが、この弁財天は特に「京の七福神巡り」の一尊として祀られています。

金色不動堂*

三千院の金色不動堂

弁財天を北に進むと、金色不動堂(こんじきふどうどう)が見えてきました。

平成元年の1989年建立の比較的新しい建物で、金色不動明王(こんじきふどうみょうおう)を祀ります。

基本的に秘仏ですが、毎年4月の不動大祭の時期にだけ御開帳されます!

こちらでは、近畿三十六不動尊(きんきさんじゅうろくふどうそん)・第十六番霊場の御朱印を頂くことができますよ。

観音堂*

三千院の観音堂

金色不動堂からさらに北に進むと、境内の一番北側に位置する観音堂(かんのんどう)が見えてきます。

金色に輝く聖観音(しょうかんのん)が祀られており、聖観音の御朱印を頂くことができます。

慈眼の庭*

三千院-慈眼の庭01

観音堂の隣には、慈眼の庭(じがんのにわ)と呼ばれる枯山水の石庭が広がります。


三千院-慈眼の庭02

観音菩薩が顕現する霊場「補陀落(ふだらく)」の世界観を表現しており、庭園には合わせて二十五体の観音菩薩が配されています。

庭園の名前の通り、観音菩薩が優しい眼で私たちを見守ってくれています。

阿弥陀石仏*

三千院の阿弥陀石仏

慈眼の庭からぐるっと境内を回った西側、律川にかかった橋を渡った先にあるのが阿弥陀石仏(あみだせきぶつ)です。

鎌倉時代の作と言われ、高さは約2m30cmもある大きな石仏です。

その昔、この場所には腕の良い炭焼きのおじいさんが住んでいた古事から「売炭翁(ばいたんおきな)石仏」とも呼ばれるんだとか。

おさな六地蔵*

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阿弥陀石仏の周辺には、とても可愛いおさな六地蔵がひっそりと佇んでいます。

周辺が賽の河原(さいのかわら)に見立てられており、石積みをしている子供を今日も優しく迎えに行っているんでしょうね!

円融蔵*

三千院の円融蔵

三千院の境内にある見どころのラストを飾るのは、境内をぐるっと回った一番南側に位置する円融蔵(えんにゅうぞう)

三千院の開山以来、このお寺に所蔵されている寺宝の一部が展示されていました!

また、こちらでご本尊などの御朱印を頂くことができます。

これで三千院境内の有料エリアの見どころを制覇しました。

折角なので、散策がてらに三千院近くの見どころをちょっと追加で見ていきましょう!

法華堂

三千院近くの法華堂

こちらは三千院の隣にある法華堂(ほっけどう)です。

後鳥羽天皇(ごとばてんのう)の冥福を祈るために、江戸時代の安永年間に再建された建物です。

普賢菩薩(ふげんぼさつ)をご本尊としますが、秘仏のため基本的に見ることはできません。

大原陵

三千院近くの大原陵

こちらは先ほどの法華堂の隣にある大原陵(おおはらのみささぎ)です。

「陵(みささぎ)」とは天皇のお墓のことで、こちらは後鳥羽天皇(ごとばてんのう)順徳天皇(じゅんとくてんのう)のお墓になります。


三千院-御陵参道の石碑

そのため、三千院の前にある参道は後鳥羽天皇と順徳天皇の御陵参道(ごりょうさんどう)でもあるんですね。

勝手神社

三千院近くの勝手神社

三千院の境内の外側をぐるっと北に回ると、勝手神社(かってじんじゃ)があります。

三千院のあるこの地は古くから「魚山(ぎょざん)」と言われ、これは三千院の山号にもなっています。

この勝手神社は、昔からこの魚山周辺を守護する地神として崇拝されてきたと言います。


三千院近くの勝手神社02

この勝手神社の祭神は、勝手明神(かってみょうじん)

平安時代の1125年、天台宗の僧であり融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)の開祖・良忍(りょうにん)が、奈良にある霊山・多武峰(とうのみね)の神様を勧請してきたんだとか。

三千院の紅葉

三千院及びその周辺は、紅葉の名所として有名です。

紅葉の見ごろは、毎年11月下旬~12月上旬ごろです!

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三千院の動画

三千院の写真

Sanzen-in Temple (Sakyo Ward, Kyoto):三千院(京都市左京区)


三千院の御朱印

三千院-ご本尊「薬師如来」の御朱印

三千院のご本尊、「薬師如来(やくしにょらい)」の御朱印、墨文字は「本尊 薬師如来」です。


三千院-国宝「弥陀三尊」の御朱印

こちらは往生極楽院に鎮座する国宝「阿弥陀三尊(あみださんぞん)」の御朱印、墨文字は「弥陀三尊」です。

三千院への行き方/アクセス方法

三千院のある大原には、電車の最寄り駅がありません。

京都駅、河原町駅、国際会館駅や出町柳駅から京都バスに乗車し「大原バス停」で下車、そこから徒歩(約15分)で向かいます。

「国際会館駅」まで電車で行き、そこから「京都バス」に乗車する行き方が一番おすすめです。

この路線を走るバスには「一日乗車券」が使えません!


大阪駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

②京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。

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なんば駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①大阪メトロ(地下鉄)で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。

②JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

③京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。

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京都駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。

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地下鉄 国際会館駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「国際会館駅前 乗り場3」から「京都バス19系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:19系統[大原・小出石行き] 
乗車バス停:国際会館駅前[乗り場3]
降車バス停:大原
運賃:350円
所要時間:約22分

■19系統[大原・小出石行き] の時刻表


京阪 出町柳駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「出町柳駅前 乗り場C」から「京都バス16/17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:16/17系統[大原行き] 
乗車バス停:出町柳駅前 乗り場C
降車バス停:大原
運賃:430円
所要時間:約33分

■16/17系統[大原行き] の時刻表


阪急 河原町駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「河原町通北行のりば」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:河原町通北行のりば
降車バス停:大原
運賃:520円
所要時間:約52分

■17系統[大原行き] の時刻表


JR/地下鉄 京都駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「京都駅前 乗り場C3」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:京都駅前 乗り場C3
降車バス停:大原
運賃:550円
所要時間:約68分

■17系統[大原行き] の時刻表


最寄りバス停「大原」からのルート例(徒歩)

大原バス停から三千院までは約600m、徒歩15分です。


タクシーを使う場合

京都駅から:約6600 (約40分)

河原町駅/祇園四条駅から:約5900円(約35分)

国際会館駅から:約3500円(約20分)

・タクシー運転手に行き先を告げたい場合

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・タクシーを呼びたい場合

taxi-call

[タクシー配車連絡先: 京都駅周辺]


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いかがでしたか?

それでは楽しい旅を!( *´艸`)