常楽寺(じょうらくじ)は、滋賀県湖南市にある天台宗(てんだいしゅう)の寺院です。
飛鳥時代から奈良時代にかけての和銅年間(708-715)、元明天皇(げんめいてんのう)の勅願により東大寺(とうだいじ)の初代開山を務めた良弁(ろうべん)を招いて開かれました。
奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから、近隣の長寿寺(ちょうじゅじ)、善水寺(ぜんすいじ)と共に「湖南三山(こなんさんざん)」の一角と称され、三山の西側に位置することから通称「西寺(にしでら)」とも呼ばれます。
阿星山の麓に広がるその境内は、滋賀県が誇る紅葉の名所としても有名です。
そんな常楽寺の見どころは、「国宝指定の重厚な本堂と三重塔」!
幾多の戦火を逃れ今に残る本堂と三重塔は、古から続く天台宗の歴史を今に伝える貴重な遺構です!
今回はそんな常楽寺を訪れてみました。
常楽寺の歴史
では、まずはじめに常楽寺の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
常楽寺の歴史は古く、寺伝によると飛鳥時代から奈良時代にかけての和銅年間(708-715)の創建と言われています。
和銅年間というと、あの日本で初めての貨幣・和同開珎(わどうかいほう)が生まれた時代!
この和同開珎を作ったとされる元明天皇(げんめいてんのう)が、この琵琶湖南部の大寺院であった阿星寺(あせいじ)の開基であった良弁(ろうべん)に命じて建立されました。
しかしなぜ天皇が直々に、京都や奈良ではなくこの滋賀の地にお寺を建てるよう命じたのでしょうか?
実はこのお寺が出来た頃の時代は、丁度日本の首都が奈良の平城京(へいじょうきょう)だったとき。
でもこの時代、平城京から一時的にこの滋賀の地に天皇の離宮が移ったことをご存知ですか?
その離宮の名前は「紫香楽宮(しがらきのみや)」。
聖武天皇(しょうむてんのう)の時代、743年と744年の2年間だけこの地の離宮で政務をしていたんですね。
そんな紫香楽宮(しがらきのみや)の鬼門を鎮護するために建立されたお寺の一つが、この常楽寺。
因みにこの地名はその後「紫香楽(しがらき)」→「信楽(しがらき)」へと漢字を変え、現在でもこの地に根付いています。
この地の焼き物の名前が信楽焼(しがらきやき)なのも元々はこの地に紫香楽宮という離宮があったから、なんですね。
閑話休題。
この常楽寺は、湖南三山(こなんさんざん)の一角として信仰されています。
この湖南三山とは、滋賀県湖南市にあり国宝を有するこの常楽寺と長寿寺(ちょうじゅじ)、善水寺(ぜんすいじ)の3つの寺院の総称のこと。
この常楽寺は本堂と三重塔が国宝に指定されていますので、その歴史をちょっと紐解いて見ましょう。
奈良時代後半、比叡山に延暦寺(えんりゃくじ)が開かれると、この常楽寺の前身であった大寺院・阿星寺(あせいじ)の寺院群も延暦寺の庇護を受け天台宗へと改宗します。
この常楽寺は、元々は先ほども書いた通り天皇の離宮を守護する寺院であったため、歴代の皇室から大事にされ、南北朝時代の1360年には現在の立派な本堂が、また室町時代の1400年には三重塔が建立されます。
また、総本山の延暦寺(えんりゃくじ)がその歴史上抗争や焼き討ちで次々と建造物や寺宝を失う中、少し離れた地にあったこの常楽寺の本堂や三重塔は戦火を免れ、奇跡的にその姿を保ちつつ現在に至りました。
そのため、この本堂と三重塔は天台宗初期の歴史を今に伝える重要な建造物としてめでたく国宝に指定されることとなりましたとさ!
おしまい。
湖南三山について
この常楽寺は、奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから近隣の長寿寺(ちょうじゅじ)、善水寺(ぜんすいじ)と共に「湖南三山(こなんさんざん)」と呼ばれています。
常楽寺を訪れる際にはぜひその他二つの寺院も訪れてみてください!
常楽寺について
お寺の詳細
住所:〒520-3121 滋賀県湖南市西寺6-5-1
連絡先:0748-77-3089
創建:和銅年間(708-715)
開基:良弁(ろうべん)
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
ご本尊:千手観音(せんじゅかんのん)
拝観予約
この常楽寺への拝観は、紅葉の時期に行われる特別拝観期間を除き「事前予約」が必要ですのでご注意ください。
また、紅葉時期が終了してからの冬季の間は毎年拝観を中止されています。
拝観可能な時期はお寺のホームページに掲載されていますので、お出かけの前に必ず確認しましょう!
拝観時間(特別拝観期間)
10:00~16:00(15:30受付終了)
拝観料(特別拝観期間)
大人 | 500円 |
中高生 | 300円 |
その他注意点
・上記情報は2019年11月の特別拝観期間に訪れた際のものであり、変更されている可能性があります。
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、常楽寺の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
常楽寺の見どころ
「*印」のついている見どころは有料エリアです。
境内*
常楽寺の最寄り駅はJR石部駅ですが、駅からは約4kmあり徒歩だと1時間以上かかります。
石部駅から常楽寺の最寄りの西寺バス停まで「湖南市コミュニティバス」が運行していますので、バスかタクシーを利用して行きましょう。
因みに乗車するバスは「石部循環線」で、近隣の長寿寺(ちょうじゅじ)にも停車しますのでぜひ両寺を一緒に巡ることをお勧めします。
最寄りの西寺バス停からは徒歩5分ほど歩くと、常楽寺の大きな石碑が見えてきました。
ちなみに、常楽寺の入り口には数十台は停められる広い駐車場が完備されていましたので、自家用車で行っても安心です。
お寺の参拝者は無料で駐車できます。(拝観料に駐車料金が含まれています。)
駐車場を抜けると、お寺への入り口がありました。
御朱印もこの受付で御朱印帳を預けると、帰りまでに直書きでしたためて頂けました。(300円)
では早速拝観料を支払い中へお邪魔したいと思います!
本堂【国宝】*
入り口を入ってすぐに、国宝の本堂(ほんどう)が見えてきました。
入母屋造、檜皮葺(ひわだぶき)の重厚かつ立派な建物で、室町時代の1360年に一度火事で焼失するも同じ年にすぐさま再建され現在に至るそうです。
本堂の扁額は少しかすれて読みにくいですが、「常楽堂(じょうらくどう)」の文字が見て取れます。
本堂は、向かって右手より中に入ることが出来ますので早速お邪魔したいと思います。
ご本尊の千手観音(せんじゅかんのん)は秘仏のため拝見することはできませんでしたが、壇の脇には、眷属である二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)と風神雷神(ふうじんらいじん)の像が所狭しと並べられており、なかなか圧巻の光景でした!
しかし、昭和56年に一部の仏像(風神・摩睺羅伽王・阿修羅王)が盗難に遭ってしまい、阿修羅王は戻ってきましたがその他二体は残念ながら今も所在不明なんだそうです。
では本堂から外に出て散策を続けたいと思います!
本堂の内部は写真や動画撮影が禁止でしたので、上記の画像は頂いたパンフレットより抜粋しています。
石燈籠【重要文化財】*
本堂の手前の植え込みにひっそりと佇んでいる石燈籠(いしどうろう)は、室町時代の1406年に建立された歴史ある燈籠で重要文化財に指定されています。
三重塔【国宝】*
本堂の左手にある一段高い場所には、本堂と並ぶこのお寺の見どころである国宝の三重塔(さんじゅうのとう)がそびえていました!
塔の高さは22.8m、本堂から遅れること約40年後の室町時代の1400年に再建されたものです。
内部には天台宗の重要経典の一つである法華経(ほけきょう)と釈迦如来像(しゃかにょらいぞう)が安置されているとのことですが、残念ながら内部に入ることはできませんでした。
一段高い場所から三重塔を眺めてみました。
この常楽寺は滋賀県が誇る紅葉の名所だけあって、秋の紅葉の季節にはこの三重塔の周囲が真っ赤に染まります!
西国三十三観音霊場石仏観音*
この常楽寺は近江西国三十三所観音霊場(おうみさいごくさんじゅうさんしょかんのんれいじょう)の第一番札所でもあります。
ここ常楽寺では各霊場の石仏が三重塔の周りをぐるりと囲うように置かれており、約15分で全ての霊場を巡るご利益を受けることができます!
薬師堂*
三十三観音霊場の石仏を巡った出口には、薬師堂(やくしどう)がありました。
その名の通り薬師如来(やくしにょらい)をご本尊とされ、内部には信楽焼で作られた薬師如来像が祀られていました。
普賢堂*
薬師堂の隣には、ひと際小さな普賢堂(ふげんどう)がありました。
こちらは普賢菩薩(ふげんぼさつ)を祀るお堂ですが、中の仏像は現在本堂の内部に移動されています。
行者堂*
普賢堂の隣には今にも倒れてしまいそうな行者堂(ぎょうじゃどう)が…。
この地は昔から山岳信仰の地でもあり、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)を祀るお堂なのですが、立ち入り禁止となっていたので中を覗くことはできませんでした。
鐘楼堂*
行者堂の隣にあるこの鐘楼堂(しょうろうどう)まで来ると、境内をぐるりと一周したことになります。
弁天堂*
鐘楼堂の向かいには小さな池があり、その中心には小さな弁天堂(べんてんどう)が祀られていました。
これで、常楽寺の主な見どころを全て見ることが出来ました!
訪問の感想としては、やはり本堂と三重塔は国宝に指定されているだけあって見応え十分!
本堂はその内部に安置されている仏像群が特に素晴らしく、三重塔は境内の色々な方向から見渡せる場所にあるため特に紅葉の時期はこの三重塔と紅葉のベストショットが撮影できると思います。
皆さんも是非行ってみてくださいね!
常楽寺の紅葉
常楽寺の動画
常楽寺の写真
常楽寺の御朱印
この常楽寺では、観音菩薩の慈悲の心を表す「大悲殿(だいひでん)」の御朱印を頂きました。
御朱印は受付で頂くことが出来ます。(300円)
常楽寺への行き方/アクセス方法
最寄り駅はJR草津線 石部(いしべ)駅です。
石部駅から常楽寺へは約4kmあり徒歩だと1時間以上かかるので、駅からは「湖南市コミュニティバス」か「タクシー」を利用しましょう。
大阪駅から石部駅へのルート例(電車)
①JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
なんば駅から石部駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。
②JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
③JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
京都駅から石部駅へのルート例(電車)
①JR琵琶湖線で「京都駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線へ乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
石部駅から湖南市コミュニティバスに乗る場合
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「石部駅バス停」から湖南市コミュニティバス「石部循環線」に乗車、「西寺(常楽寺)バス停」で下車。
バス会社:湖南市コミュニティバス
行先・系統:石部循環線
乗車バス停:石部駅
降車バス停:西寺(常楽寺)
運賃:250円
所要時間:約12分
時刻表(平日)
時刻表(休日)
タクシーで行く場合
草津駅から:約4,400円(約30分)
石部駅から:約1,600円(約10分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
タクシー配車連絡先(草津駅周辺)
タクシー配車連絡先(石部駅周辺)
常楽寺周辺のホテル検索/予約
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!