鹿王院(ろくおういん)は、京都市右京区にある臨済宗系の単立寺院です。
お釈迦様の遺骨・仏舎利(ぶっしゃり)を納めるための建物である舎利殿(しゃりでん)。
京都の舎利殿と言えば金色に輝く金閣寺(きんかくじ)が有名ですが、実はこの鹿王院にはその金閣寺とうり二つ、その外見がそっくりの舎利殿があります。
それもそのはず、どちらのお寺もその創建に深く関わった人物が室町幕府三代将軍・足利義満(あしかがよしみつ)。
そのため金閣寺の舎利殿が再建される際に、この鹿王院の舎利殿のフォルムも参考にされたんだそうな。
そんな鹿王院の見どころは、やはり「金閣寺とそっくりさんの舎利殿」!
ここでは、観光客で大人気の金閣寺では味わえない静寂の中に佇む舎利殿をゆっくりと楽しむことができます。
今回はそんな鹿王院を訪れてみました。
鹿王院の歴史
では、まずはじめに鹿王院の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
室町幕府の三代将軍であった足利義満(あしかがよしみつ)は、禅の教えをこよなく愛する人物だったと言われます。
室町時代の1379年、義満は夢の中で宝幢菩薩(ほうどうぼさつ)という悟りを開く手助けをしてくれる菩薩様にこんなお告げを受けます。
菩薩「義満や、お前さんは今年大きな病に苦しんで死んじゃうぞぃ!」
菩薩「しかし、わしが言う場所に禅寺を作って禅の教えを忠実に守れば寿命が延びるぞぃ!」
義満「な…、なんですとー!禅を信仰していて良かった!さっそ禅寺を作らなきゃ!」
てな感じの夢のお告げを元に、義満は夢のお告げの翌年に当たる1380年に宝幢禅寺(ほうどうぜんじ)と言う禅寺をこの地に創建し、禅の師と仰いでいた春屋妙葩(しゅんおくみょうは)という臨済宗の僧を開山に迎えます。
この春屋妙葩という方、あまり聞き慣れない名前ですが実はあの金閣寺(きんかくじ)や銀閣寺(ぎんかくじ)を従える禅寺・相国寺(しょうこくじ)の実質的な開山を務めた人物で、義満と共に京都にある禅寺の発展に大きく寄与したすごい人!
義満はそんな禅の師匠の業績を称えるため、新しく作ったお寺の近くに師匠のためのお寺も作ることにしました。
その師匠のために義満が作ったお寺こそが、この鹿王院(ろくおういん)。
お寺を作る際に、鹿の群れがどこからともなく現れたことからこの名がつけられたと言われます。
お釈迦様が初めて説法を行った聖地も、鹿が多く住んでいたとされる鹿野苑(ろくやおん)なので、その響きを重ね合わせたのかも知れませんね。
その後、応仁の乱(おうにんのらん)により親寺の宝幢禅寺や配下のお寺はことごとく焼失してしまいますが、この鹿王院だけは焼失を逃れ、江戸時代の寛文年間(1661-1673)に徳川家にゆかりがあった虎岑玄竹(こしんげんちく)という僧により中興され現在に至ります。
閑話休題。
この鹿王院の見どころである、金閣寺にある建物とそっくりな形をした舎利殿(しゃりでん)。
仏舎利(ぶっしゃり)とはお釈迦様の遺骨であり、舎利殿とはその遺骨を納める建物を指します。
この舎利(しゃり)という言葉、古代インドの言葉・サンスクリット語で「遺骨」の意味を持つ「Sarira(シャリラ)」という言葉が元々の由来なんだそう。
また、お釈迦様の遺骨そのものには数の限りがあるため、宝石や輝石などの「白い粒」を遺骨の代替品として納めることもしばしばなんだとか。
ん?「しゃり」と呼ばれる「白い粒」ってどこかで聞いたことがあるような…?
はい、お米ですね!
私たちが「お米」の事を「しゃり」と呼ぶのは、実はこのお釈迦様の遺骨である「舎利(シャリ)」から来ているとも言われるんです。
また、実際にサンスクリット語でも「sari(シャリ)」という発音は「お米」の意味を持つんだとか!
昔から日本ではお米を頂く際には、手を合わせて「いただきます」と感謝の祈りをしてから食べることが習慣になっていますが、それもお米をお釈迦様の遺骨と重ね合わせているのかも知れませんね。
このように日本人の価値観にも多大な影響力を及ぼしたお釈迦様の遺骨である「舎利(しゃり)」が、この鹿王院の舎利殿に納められています。
お米の一粒一粒を噛みしめるようにゆっくりと、舎利殿に納められている仏舎利に手を合わせるのも乙なものですね。
おしまい。
鹿王院について
お寺の詳細
住所 | 〒616-8367 京都市右京区嵯峨北堀町24 |
連絡先 | 075-861-1645 |
創建 | 1380年/室町時代 |
開基 | 足利義満(あしかがよしみつ) |
宗派 | 臨済宗系単立 |
ご本尊 | 釈迦如来(しゃかにょらい) |
拝観時間
9:00~17:00
拝観料
高校生以上 | 400円 |
小中学生 | 200円 |
駐車場
あり(無料/約4台)
その他注意点
・上記情報は2019年4月に訪れた際のものであり、変更されている可能性があります。
・鹿王院は秋に夜間特別拝観が行われる場合があります。詳しくは嵐電のホームページを参照してください。
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、鹿王院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
鹿王院の見どころ
「*」のついている見どころは、有料エリアです。
鹿王院の最寄り駅は嵐電 嵐山本線 鹿王院(ろくおういん)駅で、駅からは徒歩約5分(約300m)です。
行き方は「鹿王院への行き方/アクセス方法」で詳しく説明していますのでご覧くださいね。
歩くこと約5分、鹿王院の入り口が見えてきました!
入り口前には約4台ほど駐車できる無料の駐車場がありますが、道が狭く近くに保育園などもあるためできればレンタサイクルや徒歩で行かれることをおすすめします。
では早速、境内へお邪魔してみたいと思います!
山門
入り口にある山門(さんもん)は、このお寺が創建された室町時代の1380年当時の建造物なんだそうです。
山門に掲げられている扁額には、お寺の山号である「覚雄山(かくゆうざん)」の文字。
この「覚雄(かくゆう)」という文字には、「悟りに至る大人物=釈迦如来」の意味が込められているんだとか。
足利義満(あしかがよしみつ)が創建したお寺だけあって、この文字は義満が24歳の時に書いた文字を元にして作られています。
参道
山門から一歩境内に入るとそこはもう静寂の世界、本堂へと続く石畳の参道が延々と続いています。
直線の先が「く」の字に折れた一本道で、両脇が楓並木になっています。
そのため、この鹿王院の参道は秋の紅葉の名所としても知られています!
昨今の嵐山地区は秋になると観光客で大混雑しますが、この鹿王院は少し離れた場所にあるためそれほど混雑することもなく紅葉を楽しむことができます。
鎮守社
参道の脇には、古くからこの地を守護する神様を祀る鎮守社(ちんじゅしゃ)がひっそりと佇んでいます。
神様に手を合わせつつ、境内の奥に進んでいきたいと思います。
中門
境内の参道を進んでいくと、中門(ちゅうもん)が見えてきました。
では門をくぐって中に入りたいと思います。
前庭
中門をくぐると、松と桜に彩られた苔地の枯山水である前庭(まえにわ)が広がっていました。
庫裏
前庭の先に建つ建物が、江戸時代の寛文年間(1661-1673)にこのお寺が再興された際に再建された庫裏(くり)です。
拝観の受付や御朱印の拝受は、全てここで行います。
受付を済ませると、庫裏の建物内から境内に進むことになります。
庫裏の正面には韋駄天(いだてん)が祀られていました。
韋駄天は、禅宗のお寺においては庫裏などの僧房(お坊さんの住居)を守護する御法神として崇められているんだとか。
だから禅宗系の寺院の建物には韋駄天が多く飾られているんですね、調べる今の今まで知りませんでした…。
本庭*
庫裏の内部を進んでいくと、ぱっと視界が開けた先に本庭(ほんてい)が広がっていました!
平庭式の苔地の枯山水庭園で、金閣寺(きんかくじ)そっくりの舎利殿とその背後に広がる嵐山を借景とした構図が素敵ですね。
このお寺が出来た室町時代には、既にこの庭園の原型があったそうです。
一説によると日本でも最古の歴史を持つ平庭式の枯山水庭園で、京都市の名勝にも指定されています。
客殿*
本庭の正面、庫裏に隣接して建つ建物が客殿(きゃくでん)です。
こちらの建物の歴史は比較的新しく、明治時代の1890年に再建されたものなんだそうです。
しかしこの客殿に掲げられている扁額の文字は古く、入り口の山門に掲げられていた書と同じくこのお寺を創建した足利義満(あしかがよしみつ)の筆と言われています。
鹿王院にはこのような義満ゆかりの品がそこかしこにあり、いかに義満がこのお寺を大事にしていたのかが良く分かりますよね。
本堂*
この鹿王院の各建物は全て一つの回廊でつながっています。
瓦屋根が備えられているので、雨の日も安心して拝観できるのが嬉しいですね。
客殿から伸びる回廊を奥に進むと、その突き当りに本堂(ほんどう)が見えてきます。
こちらは開山堂としての役割も備えているため、内部にはご本尊の釈迦如来(しゃかにょらい)をはじめ、開山である春屋妙葩(しゅんおくみょうは)や足利義満(あしかがよしみつ)の像などがずらりと祀られていました。
内部は写真撮影禁止の札がかかっていましたので、ぜひ実際に足を運んでみてください。
舎利殿*
本堂から更に伸びる回廊を進むと、その先に見えてくるのがこの舎利殿(しゃりでん)です。
江戸時代の1763年にこの地に移築されたもので、その内部にはお釈迦様の遺骨である仏舎利(ぶっしゃり)が納められています。
先にも書いた通り、かの有名な金閣寺の舎利殿はその再建する際にこの鹿王院の舎利殿を参考にした、と言われています。
ということでちょっと二つの建物を並べてみましたが、やっぱり似ていますね!
しかも金閣寺の舎利殿の内部は基本的に非公開ですが、この鹿王院の舎利殿の内部は自由に入ることができちゃいます。
中央の須弥壇には大きな厨子がどどんと鎮座しています。
この中にある小さな宝塔に仏舎利が納められており、この厨子の扉は一年に一度、10月15日の「舎利会(しゃりえ)」と呼ばれる日にのみ御開帳されます。
私は一度もこの御開帳日に立ち寄ることはできていませんが、今後タイミングが合えばぜひ行って見たいと思います!
仏舎利を納める厨子の四方には、仏法僧を守護する四天王(してんのう)像がにらみを利かせていました。
それぞれが極彩色の表情豊かな素晴らしい彫像で、この像を見るだけでも拝観料を支払う価値があると思います。
また、室内にはお釈迦様の入滅を描いた涅槃図(ねはんず)も飾られていました!
さて、舎利殿も十分堪能できたので来た道を客殿の方向へ戻りたいと思います。
茶室「芥室」*
舎利殿から客殿へ戻る途中、回廊が分かれている場所があります。
その分岐を違う方向に進んでいくと、このお寺の宿坊と茶室が見えてきます。
何でもこの宿坊は「女性専用の宿坊」なんだそうで、今でも現役で利用されているそうです。
後庭/茶庭*
宿坊の奥には「芥室(あくたしつ)」と呼ばれる茶室と露地がありますが、残念ながら茶室は原則非公開なんだそうです。
露地は後庭/茶庭とも呼ばれ、本庭と同じく苔地の枯山水庭園になっていました。
これで、鹿王院の主な見どころを全て見ることが出来ました!
訪問の感想としては、昨今観光客で激混みの嵐山の近くにあるにしてはずいぶんと空いていてゆっくりできるお寺さまだなーというものでした。
秋の紅葉の時期はもちろん、それ以外の時期でも金閣寺の元となった舎利殿やその内部の極彩色の厨子や彫像など、入り口を見ただけでは分からない沢山の見どころがあるのでおすすめです。
皆さんも是非行ってみてくださいね!
鹿王院の紅葉
この鹿王院は、秋の紅葉の名所としても知られています。
紅葉の見ごろは、毎年11月下旬から12月上旬です。
鹿王院の動画
鹿王院の写真
鹿王院の御朱印
この鹿王院では、仏舎利を安置するお寺の象徴的な建物である「佛牙舎利殿(ぶつげしゃりでん)」の御朱印を頂きました。
御朱印は、庫裏の受付にて頂くことが出来ます。(各300円)
鹿王院への行き方/アクセス方法
最寄り駅は嵐電 嵐山本線 鹿王院(ろくおういん)駅かJR山陰本線 嵯峨嵐山(さがあらしやま)駅です。
京都駅や京都河原町駅、祇園四条駅からバスで行くことも出来ます。
大阪梅田駅から鹿王院駅へのルート例(電車)
①阪急京都線で「大阪梅田駅」から「西院駅」へ行き、嵐電嵐山本線に乗り換え。
(「快速特急」や「特急」を利用する場合は、「桂駅」で乗り換えが必要です。)
②嵐電嵐山本線で「西院駅」から「鹿王院駅」へ。
なんば駅から鹿王院駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、阪急京都線に乗り換え。
②阪急京都線で「大阪梅田駅」から「西院駅」へ行き、嵐電嵐山本線に乗り換え。
(「快速特急」や「特急」を利用する場合は、「桂駅」で乗り換えが必要です。)
③嵐電嵐山本線で「西院駅」から「鹿王院駅」へ。
京都駅から嵯峨嵐山駅へのルート例(電車)
①JR嵯峨野線(山陰本線)で「京都駅」から「嵯峨嵐山駅」へ。
鹿王院駅からの徒歩ルート例
鹿王院駅からは徒歩約5分(約300m)です。
京都駅からバスに乗る場合
「京都駅前 乗り場C6」から京都バス「73系統/苔寺・鈴虫寺行き」に乗車、「下嵯峨」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:73系統[苔寺・鈴虫寺行き]
乗車バス停:京都駅前[乗り場C6]
降車バス停:下嵯峨
運賃:230円
所要時間:約42分
京都河原町駅からバスに乗る場合
「四条河原町 乗り場D」から京都市バス「11系統」に乗車、「下嵯峨」で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:11系統[嵐山・嵯峨・山越行き]
乗車バス停:四条河原町 乗り場D
降車バス停:下嵯峨
運賃:230円
所要時間:約41分
祇園四条駅からバスに乗る場合
「四条京阪前 乗り場C」から京都市バス「11系統」に乗車、「下嵯峨」で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:11系統[嵐山・嵯峨・山越行き]
乗車バス停:四条京阪前 乗り場C
降車バス停:下嵯峨
運賃:230円
所要時間:約48分
タクシーで行く場合
京都駅から:約3,900円(約30分)
嵐山駅から:初乗り料金(約5分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
タクシー配車連絡先(京都駅周辺)
・タクシー配車連絡先(嵐山駅周辺)
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!