宝泉院(ほうせんいん)は、京都市左京区大原にある天台宗・勝林院(しょうりんいん)の僧房の一つです。

この大原の地は、「魚山声明(ぎょざんしょうみょう)」という天台宗には欠かせない仏教声楽の聖地であり、勝林院はその昔「魚山大原寺(ぎょざんだいげんじ)」と言う大きな念仏道場の場として栄えました。

中でも、宝泉院はそんな声明を修行する勝林院のお坊さんが寝泊まりする僧房(そうぼう)の一つとして欠かせない存在でした。

この大原の地に天台宗が根付く基礎を担った、まさに「縁の下の力持ち!」だったんですね。

そんな宝泉院の見どころは「樹齢700年を誇る五葉松と、趣の異なる3種の日本庭園」!

境内を包む大きな松の木と日本庭園は、まるで修行で疲れ帰ってきた僧たちを癒すかのように、四季折々の顔で優しく出迎えてくれます。

今回はそんな宝泉院を訪れてみました。


宝泉院の歴史

では、まずはじめに宝泉院の「歴史」「訪問する際に知っておきたいポイント」を一緒に見て行きましょう!


宝泉院の参道
新緑が美しい宝泉院の参道

宝泉院の正確な創建時期は不明ですが、鎌倉時代の嘉禎年間(1235-1237)に宗快法印という天台宗の僧により開かれたと言われます。

創建当初は「了性坊(りょうしょうぼう)」というとても簡素な僧房だったんだとか。

江戸時代の初期に、荒廃していた本山の勝林院が春日局(かすがのつぼね)の寄進で再興。

これに合わせ、この宝泉院も書院や庭園などが江戸時代を通して徐々に整備されていきました。

1716年(正徳6年)頃、現在の「宝泉院(ほうせんいん)」と呼ばれるようになり現在に至ります。


宝泉院-山門の木札

ではここから、この宝泉院をはじめこの地の天台宗寺院にとって欠かせないキーワードの「声明(しょうみょう)」についてちょっと簡単にまとめてみます!

百聞は一見に如かず。

声明とはどんなものかを見てください。


はい、「声明」とは仏教において仏さまを讃える音律(またその音律で経を読むこと)なんです。

分かりやすく言うと・・・、

「仏教における讃美歌(さんびか)」

のようなもの、なんですね。

キリスト教にある、神を讃える「讃美歌(さんびか)」やそれを歌う「聖歌隊(せいかたい)」。

同じような概念が、仏教の世界にも当然あるんだよ!と思えば分かりやすいです。

キリスト教の「讃美歌」は、仏教における「声明(しょうみょう)」。

キリスト教の「聖歌隊」は、仏教における「僧侶(そうりょ)」。

当然こまかなニュアンスは違いますが、分かりやすい例えで言うと上記のような感じです。


宝泉院境内の青紅葉
宝泉院境内の青紅葉

この声明、仏教の伝来とともに中国から日本にやってきました。

古くは、かの有名な奈良の大仏の開眼の際や、源氏物語(げんじものがたり)の一節にもこの声明が歌われる場面があるほど、昔から仏教における重要な儀式の一つだったんです。

声明がよりメジャーな存在になったのは、平安時代初期。

天台宗の開祖・最澄(さいちょう)と真言宗の開祖・空海(くうかい)が、中国の唐からそれぞれの教義に合った声明を日本に伝えたことがおこりです。

それぞれ「天台声明(てんだいしょうみょう)」「真言声明(しんごんしょうみょう)」と呼ばれ、日本における声明発展の大きな流れを作ったんですね!


宝泉院の客室から望む庭園
宝泉院の客室から望む庭園

この「声明」は、その旋律の美しさや歴史観などから、伝統音楽の一つとしてその後の日本の文化や芸能にも多大な影響を与えることにもなりました。

私たちが今でもよく耳にする、浄瑠璃(じょうるり)浪花節(なにわぶし)民謡(みんよう)演歌(えんか)などの伝統芸能の一部も、実はこの声明の音律が原点だと言われているんですよ!

ここ宝泉院は、そんな日本の伝統文化が凝縮した「声明(しょうみょう)」を育む土台を担ったお寺さんなんです。

おしまい。

宝泉院について

Webサイト

お寺の詳細

住所:〒601-1241 京都府京都市左京区大原勝林院町187
連絡先:075-744-2409
創建:1235-1237(鎌倉時代)
開基:宗快法印
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
本尊:阿弥陀如来(あみだにょらい)

拝観時間

9:00~17:00(16:30受付終了)

拝観料

大人 中・高校生 小学生
800円 700円 600円

*拝観料にはお抹茶とお茶菓子が含まれています。

*各種イベントや特別公開期間は拝観料及び拝観時間が異なる可能性があります。

その他注意点

・写真や動画撮影可能な場所は、必ず係員に確認しましょう。

・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてください。


宝泉院のパンフレット

では次に、宝泉院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!


宝泉院の見どころ

「*」のついている見どころは有料エリアです。

山門

宝泉院の山門

まずは入り口である山門(さんもん)の左手にある受付で、拝観料を払いましょう!

御朱印は書置きをこの受付で頂くことができます。

お聞きしたところ、ご住職が在寺の場合は手書きもしていただけるとのことでした。

法然上人衣掛けの石*

宝泉院-法然上人衣掛けの石

入口の山門を入ると、参道奥に法然上人(ほうねんしょうにん)衣掛けの石があります。

その昔法然がこの地を訪れた際、この石に衣を掛けてお休みになったんだとか。

書院*

宝泉院の書院入り口

参道を進むと、書院(しょいん)の入り口が見えてきます。

ここからは靴を脱いで、書院の中へお邪魔します!


宝泉院の書院外観

宝泉院の書院は、庫裏や本堂などが一つになった建築様式です。

現在の書院は、文献には室町時代の1502年(文亀2年)の再建とあるらしいですが、建築様式から見ると江戸時代初期の再建だろうとのことです。

囲炉裏の間*

宝泉院の囲炉裏の間

書院にお邪魔すると、すぐ右手には囲炉裏の間(いろりのま)があります。

名前の通り、囲炉裏が中央に配された昔ながらの日本家屋を思い出す素敵なお部屋。

用意されている座布団に座り、囲炉裏を囲みながら外の風景を楽しむのも一興ですね!

鶴亀庭園*

宝泉院の鶴亀庭園01

書院入り口の左手にある縁側の先には鶴亀庭園(つるかめていえん)が広がります。

江戸時代の中期に作られた池泉庭園で、庭園奥にはなんと樹齢300年の沙羅双樹(さらそうじゅ)の木が佇んでています。


宝泉院の鶴亀庭園02

その名の通り、池を鶴、築山を亀、山茶花(さざんか)の古木を蓬莱山に見立てた縁起を担いだ庭園です。


宝泉院-鶴亀庭園の紅葉

この庭園、新緑の時期も綺麗ですが何といっても秋の紅葉シーズンは抜群の美しさですよ!

盤桓園*

宝泉院の盤桓園

書院の中を進んでいくと、盤桓園(ばんかんえん)に面する奥の客間に通されます。

「盤桓」とは「素晴らしすぎて立ち去り難い!」という意味です。


宝泉院の盤桓園02

また、この素晴らしい景色を絵画、建物の木枠を額縁に見立てて「額縁の庭園(がくぶちのていえん)」なんて呼んだりもするんだとか!


宝泉院のパンフレット

この庭園が望める客室に通されると、お抹茶と茶菓子を頂くことができます。

お抹茶を頂きながら、ゆっくりと風情ある庭園を眺める。

ここでは、そんな何とも贅沢な時間を過ごすことが出来ちゃいます。

五葉の松*

宝泉院の五葉の松01

庭園の南側には、このお寺一番の見どころである五葉の松(ごようのまつ)がどどんっ!と鎮座しています。

樹齢なんと700年以上。

お寺の歴史そのものでもあるこの松は、大原の地で起こってきた様々な歴史を見続けてきたまさに生き証人ですね。


宝泉院の五葉の松02

近代日本の名俳人・高浜虚子(たかはまきょし)は、五葉の松を見てこう詠んだとか。

「大原や 無住の寺の 五葉の松」

その昔お寺にご住職が居なかった時代でも、この五葉松が存在感を放っていたことを偲ばせますね・・・。

血天井*

宝泉院の血天井

書院の天井の一部には、旧伏見城の遺構が使われています。

それがこの血天井(ちてんじょう)

伏見城落城の際に、最後まで抵抗し命を落とした徳川家の忠臣・鳥居元忠(とりいもとただ)ら数百名の血痕がまざまざと残されています・・・。

徳川家はこの忠義の士たちを忘れまいと、その遺構をこうして京都の様々なお寺に血天井として残したんだとか。

理智不二水琴窟*

宝泉院の理智不二水琴窟

庭園北側では、水琴窟の綺麗な調べが尽きることなく奏でられていました!

ぱっと見ではわかりませんがこれ、ひとつが「高音」、もう一つが「低音」を司る全国的にも珍しい二連式の水琴窟(すいきんくつ)

密教では慈悲と知恵の世界の調和を指して「理智不二(りちふに)」というそうですが、まさにこの水琴窟の名前に相応しいですね!

これで主要な見どころは見終わったんですが、最後にもう一つ忘れずに見ておきたいポイントを紹介します。

宝楽園*

宝泉院の宝楽園01

山門の入り口の左手には、2005年に作庭された枯山水の宝楽園(ほうらくえん)が広がります。

ここ、入り口がちょっと分かりずらく、スルーされがちなので忘れずに訪れましょう!

「原初の海」がモチーフで、念珠石と呼ばれる石を巧みに用いて仏教の世界観を表現していると言います。


宝泉院の宝楽園02

中央にはどどんっ!と存在感のある三尊石(さんぞんせき)が鎮座し、阿弥陀如来とその脇侍である観音/勢至菩薩が来迎するさまを表現しています。


宝泉院-宝楽園の紅葉

こちらの庭園も、秋の紅葉が抜群に綺麗なのでぜひお見逃しなく!

宝泉院の紅葉

宝泉院の境内及び周辺は、紅葉の名所としても有名です。

紅葉の見ごろは、毎年11月下旬~12月上旬ごろです!

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宝泉院の動画

宝泉院の写真

Hosen-in Temple (Sakyo Ward, Kyoto):宝泉院(京都市左京区)


宝泉院の御朱印

宝泉院の御朱印

宝泉院の御朱印は、阿弥陀如来の慈悲(大慈悲)表す「佛心(ぶっしん)」の墨文字です。

仏教の構成要素である三宝・「仏法僧(ぶっぽうそう)」の朱印が印象的ですね。

宝泉院への行き方/アクセス方法

宝泉院のある大原には、電車の最寄り駅がありません。

京都駅、河原町駅、国際会館駅や出町柳駅から京都バスに乗車し「大原バス停」で下車、そこから徒歩(約15分)で向かいます。

「国際会館駅」まで電車で行き、そこから「京都バス」に乗車する行き方が一番おすすめです。

この路線を走るバスには「一日乗車券」が使えません!


大阪駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

②京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


なんば駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①大阪メトロ(地下鉄)で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。

②JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

③京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


京都駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


地下鉄 国際会館駅からバスで行く場合

「国際会館駅前 乗り場3」から「京都バス19系統」に乗車、「大原」で下車。

乗換え案内(バス)

バス会社:京都バス
行先・系統:19系統[大原・小出石行き] 
乗車バス停:国際会館駅前[乗り場3]
降車バス停:大原
運賃:350円
所要時間:約22分

■19系統[大原・小出石行き] の時刻表


京阪 出町柳駅からバスで行く場合

「出町柳駅前 乗り場C」から「京都バス16/17系統」に乗車、「大原」で下車。

乗換え案内(バス)

バス会社:京都バス
行先・系統:16/17系統[大原行き] 
乗車バス停:出町柳駅前 乗り場C
降車バス停:大原
運賃:430円
所要時間:約33分

■16/17系統[大原行き] の時刻表


阪急 河原町駅からバスで行く場合

「河原町通北行のりば」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

乗換え案内(バス)

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:河原町通北行のりば
降車バス停:大原
運賃:520円
所要時間:約52分

■17系統[大原行き] の時刻表


JR/地下鉄 京都駅からバスで行く場合

「京都駅前 乗り場C3」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

乗換え案内(バス)

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:京都駅前 乗り場C3
降車バス停:大原
運賃:550円
所要時間:約68分

■17系統[大原行き] の時刻表


最寄りバス停「大原」からのルート例(徒歩)

大原バス停から宝泉院までは約750m、徒歩20分です。


タクシーを使う場合

京都駅から:約6600 (約40分)

河原町駅/祇園四条駅から:約5900円(約35分)

国際会館駅から:約3500円(約20分)

・タクシー運転手に行き先を告げたい場合

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・タクシーを呼びたい場合

taxi-call

[タクシー配車連絡先: 京都駅周辺]


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いかがでしたか?

それでは楽しい旅を!( *´艸`)