長寿寺(ちょうじゅじ)は、滋賀県湖南市にある天台宗(てんだいしゅう)の寺院です。
奈良時代の天平年間(729-748)に、聖武天皇(しょうむてんのう)の勅願で東大寺(とうだいじ)の初代開山を務めた良弁(ろうべん)を招いて興されました。
平安時代にこの阿星山の麓に開かれ、天台宗の一大道場であった阿星寺(あせいじ)。
この長寿寺はそんな阿星寺を中心に5,000を超える修行道場がひしめき、「星山五千坊(あぼしやまごせんぼう)」とも呼ばれたこの地の大寺院群の中核を担ったお寺さまの一つです。
奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから、近年は近隣の常楽寺(じょうらくじ)、善水寺(ぜんすいじ)と合わせ「湖南三山(こなんさんざん)」と称され、三山の東側に位置することから通称「東寺(ひがしでら)」とも呼ばれます。
また、阿星山の麓に広がる境内は滋賀県が誇る紅葉の名所としても知られています。
そんな長寿寺の見どころは、「鎌倉時代の建立当時の姿を今に残した国宝の本堂」!
建立後から殆ど手が加えられていないとされる本堂は、古から続く天台宗の歴史を今に伝える貴重な遺構です!
今回はそんな長寿寺を訪れてみました。
長寿寺の歴史
では、まずはじめに長寿寺の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
長寿寺の歴史は古く、寺伝によると奈良時代の天平年間(729-748)の創建と伝わります。
今回は、この長寿寺が出来たいきさつを少し詳しく見て行きたいと思います!
長寿寺が創建された天平年間は、飢饉や干ばつはもとより大地震や天然痘の流行などで、長い日本の歴史上においても例を見ないほどの「暗黒時代」。
さらに、そんな時代の日本を統治していた聖武天皇(しょうむてんのう)に後継ぎがなかなか生まれないという、まさに踏んだり蹴ったりの状態でした。
聖武天皇「後継ぎは産まれんし、天災あるし、飢饉やし、病気は流行るしでもうあかんわ…。」
そんな不安定な時代に迷走した聖武天皇は、挙句の果てにはこんな行動に出ちゃいます。
聖武天皇「こんな踏んだり蹴ったりなんも、都のある奈良が呪われとるんとちゃうか?」
聖武天皇「せやったらいっちょ遷都して運気を上げたろ!わし天才!」
てな感じのノリで都を変えること何と計4回!その変遷はこんな感じです。
1回目「奈良の平城京(へいじょうきょう)」から「京都の恭仁京(くにきょう)」へ。
2回目「京都の恭仁京(くにきょう)」から「滋賀の紫香楽宮(しがらきのみや)」へ。
3回目「滋賀の紫香楽宮(しがらきのみや)」から「大阪の難波京(なにわきょう)」へ。
4回目「大阪の難波京(なにわきょう)」から「奈良の平城京(へいじょうきょう)」へ。
ものの数年で遷都を繰り返した結果、現代の社会の授業でもめったに教えてくれない都のオンパレードですね。
しかも最後には振り出しの平城京に戻ると言う…、この時代がいかに混乱していたかが分かりますね。
そんな混乱デバフがかかっていた聖武天皇がすがったのが仏教であり、その第一人者であった良弁(ろうべん)でした。
聖武天皇「もうこうなったら仏様にすがるしかないやん!助けて(涙)!」
良弁「任せときなはれ!なむなむー!」
ほぎゃーっ、ほぎゃーっ。
聖武天皇「おぉぉ!念願の子供が生まれた!天災もやんだ!仏教すごい!ビバ仏教!」
聖武天皇「こうなったら離宮の鬼門方向にばんばんお寺を建てて災いを防いだろ!良弁よろしく!」
良弁「あいさー!」
てな感じで、聖武天皇がこの滋賀の地に紫香楽宮(しがらきのみや)を構えていた際に出来た寺院群の一つがこのお寺なんです。
そして、聖武天皇は子供の誕生を祝い、子安地蔵菩薩(こやすじぞうぼさつ)と子供の安寧長寿を祈願する長寿寺(ちょうじゅじ)の名をこのお寺に贈りましたとさ。
その後は源氏や足利氏の祈願所として栄えましたが、戦国時代に入ると織田信長(おだのぶなが)により境内の三重塔や楼門などの主要な建造物が信長ゆかりの地に移されてしまいその規模を縮小することに。
その際本堂や弁天堂、幾つかの仏像などは難を逃れ現在に至ります。
おしまい。
湖南三山について
この長寿寺は、奈良時代から続く歴史と国宝の建造物を持つことから近隣の常楽寺(じょうらくじ)、善水寺(ぜんすいじ)と共に「湖南三山(こなんさんざん)」と呼ばれています。
長寿寺を訪れる際にはぜひその他二つの寺院も訪れてみてください!
長寿寺について
お寺の詳細
住所:〒520-3111 滋賀県湖南市東寺5-1-11
連絡先:0748-77-3813
創建:天平年間(729-748)
開基:良弁(ろうべん)
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
ご本尊:子安地蔵菩薩(こやすじぞうぼさつ)
拝観時間
9:00~16:00
拝観料
大人 | 500円 |
中高生 | 300円 |
お寺のWebサイト
その他注意点
・上記情報は2019年11月に訪れた際のものであり、変更されている可能性があります。
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、長寿寺の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
長寿寺の見どころ
「*印」のついている見どころは有料エリアです。
長寿寺の最寄り駅はJR石部駅ですが、駅からは約5kmあり徒歩だと90分ほどかかります。
石部駅から長寿寺の最寄りの東寺バス停まで「湖南市コミュニティバス」が運行していますので、バスかタクシーを利用して行きましょう。
因みに乗車するバスは「石部循環線」で、近隣の常楽寺(じょうらくじ)にも停車しますのでぜひ両寺を一緒に巡ることをお勧めします。
最寄りの東寺バス停から徒歩3分ほど歩くと、長寿寺の山門と石碑が見えてきます!
長寿寺の山門手前には大きな駐車場が完備されていますので、自家用車で行っても安心です。
お寺の参拝者は無料で駐車できます。
山門*
参道入口では、苔むした屋根に真新しい「国宝 長寿寺」の看板が印象的な山門(さんもん)が出迎えてくれます。
山門の横にある小さな建物が拝観受付所になっています。
では拝観料を支払い中へお邪魔してみたいと思います!
参道*
入口の山門を抜けると、鎮守社である白山神社(はくさんじんじゃ)への道と、本堂への道の二手に分かれていました。
まずは本堂を目指して歩いて行きたいと思います。
信楽焼(しがらきやき)の本場らしく、参道の脇には沢山の動物の焼き物が置かれており参拝者の目を楽しませてくれます。
内佛堂*
この長寿寺は子宝・安産祈願の子安地蔵菩薩(こやすじぞうぼさつ)をご本尊とされています。
参道の脇にはその地蔵菩薩の御利益が宿ったのでしょうか、子宝を育むと言われる石が内佛堂(ないぶつどう)に奉じられていました。
また、内佛堂近くの参道脇には沢山の小さな子宝灯籠(こだからとうろう)が積まれており、ここが安産や子宝を授ける力に満ちている事を指し示していました。
石造多宝塔*
参道を奥に進むと、右手に石造りの多宝塔(たほうとう)が見えてきました。
塔の前にある説明書きには日本最大級の石造多宝塔とあり、聖武天皇(しょうむてんのう)の菩提を弔うために鎌倉時代に建立されたんだとか。
近づいてよく見てみると、人の背丈を優に超える大きな塔です。
多宝塔と言えば朱塗りの木造建築というイメージなので、石造りのものは確かに珍しいですね。
こうした石造りの塔は五輪塔(ごりんとう)に多いですが、こちらは良く数えると石積みが五つ以上あるので五輪塔の範疇では無いのでしょう。
鐘楼*
多宝塔から更に奥に進むと、今度は本堂の手前に建つ鐘楼(しょうろう)が見えてきました。
見た感じはかなり年季が入った建物で、建立された年などは分かりませんでしたが、本堂と同時期であれば鎌倉時代前期のものでしょうか。
本堂【国宝】*
参道の突き当りまで進むと、この長寿寺の一番の見どころである国宝の本堂(ほんどう)が見えてきました!
鎌倉時代前期に建立された檜皮葺の重厚な建築様式で、古い歴史を持つ湖南三山(こなんさんざん)において現存する最も古い建物の一つなんだそうです。
また再建当時から殆ど手を加えられていないらしく、その歴史的価値は相当高いんだとか。
本堂の扁額には、かすれた字で読みにくいですがこのお寺の山号である「阿星山(あしょうさん)」の文字が見て取れます。
この本堂には、右手の入り口から内陣に入ることが出来ます。
本堂の内陣には、ご本尊の子安地蔵菩薩(こやすじぞうぼさつ)を祀るための春日厨子(かすがずし)や重要文化財の阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)、釈迦如来像(しゃかにょらいぞう)などが祀られていました。
ご本尊の子安地蔵菩薩は秘仏であり、この厨子は50年に1度しか御開帳されないんだとか。
しかも前回の御開帳は2012年だったそうなので、次回は2062年ですね!
既に私は死んでるかも知れません。(苦笑)
本堂内陣の写真や動画の撮影は禁止ですので、写真は頂いたパンフレットから引用させて頂いています。
弁天堂【重要文化財】*
本堂の隣にある小さな池の中心には、弁天堂(べんてんどう)が静かに鎮座していました。
とても小さな外観のお堂ですが、室町時代の1550年の建立当時の姿を残した貴重な建物として重要文化財に指定されています。
阿弥陀堂*
本堂の裏手には、比較的新しい建築様式の阿弥陀堂(あみだどう)があります。
その名の通り阿弥陀如来(あみだにょらい)を祀るお堂で、内部には丈六阿弥陀如来坐像(じょうろくあみだにょらいざぞう)が祀られています。
写真は頂いたパンフレットから引用させて頂いています。
白山神社拝殿【重要文化財】*
では次に、参道左手にあるお寺の鎮守社「白山神社(はくさんじんじゃ)」の方向に向かいたいと思います。
白山神社の参道を進むと、拝殿(はいでん)が見えてきました。
室町時代の建立だそうで、通常の神社にある拝殿とは異なり、網目状の格子戸が全面に張られているのがかなり特徴的ですね。
白山神社本殿*
拝殿のさらに先、一段高い場所には白山神社の本殿(ほんでん)が鎮座しています。
この白山神社は長寿寺創建当初からの鎮守社だったそうで、石川県にある白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)におられる白山比咩神(しらやまひめのかみ)の御霊を祀ります。
三重塔跡*
白山神社の拝殿の左手の小さな丘に三重塔跡(さんじゅうのとうあと)の看板があったので、ちょっと上ってみました。
上ること約30秒、ちょっと開けた場所に三重塔の基礎となる石組みがありました。
元々はここに立派な三重塔があったのですが、織田信長(おだのぶなが)の命令により、安土城があった場所で信長の菩提寺の一つでもある摠見寺(そうけんじ)に移されてしまったそうです。
因みに三重塔自体は、この摠見寺で今もなお立ち続けているそうです。
これで、長寿寺の主な見どころを全て見ることが出来ました!
訪問の感想としては、やはり国宝の本堂の存在感が別格。
通常お寺の建築物は後世に手を加えたり補強をしたりでその外観がかなり創建当初と変わっていることが多いのですが、この本堂はまさにほとんど手つかず、鎌倉時代の名残を今にそのまま残してくれており見応え十分でした。
皆さんも是非行ってみてくださいね!
長寿寺の紅葉
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長寿寺の動画
長寿寺の写真
長寿寺の御朱印
この長寿寺では、ご本尊である「子安地蔵菩薩(こやすじぞうぼさつ)」の御朱印を頂きました。
御朱印は入り口の受付で頂くことが出来ます。(300円)
長寿寺への行き方/アクセス方法
最寄り駅はJR草津線 石部(いしべ)駅です。
石部駅から長寿寺へは約5kmあり徒歩だと90分以上かかるので、駅からは「湖南市コミュニティバス」か「タクシー」を利用しましょう。
大阪駅から石部駅へのルート例(電車)
①JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
なんば駅から石部駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。
②JR京都線(琵琶湖線直通)で「大阪駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線に乗り換え。
③JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
京都駅から石部駅へのルート例(電車)
①JR琵琶湖線で「京都駅」から「草津駅」へ行き、JR草津線へ乗り換え。
②JR草津線で「草津駅」から「石部駅」へ。
石部駅から湖南市コミュニティバスに乗る場合
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「石部駅バス停」から湖南市コミュニティバス「石部循環線」に乗車、「東寺(長寿寺)バス停」で下車。
バス会社:湖南市コミュニティバス
行先・系統:石部循環線
乗車バス停:石部駅
降車バス停:東寺(長寿寺)
運賃:250円
所要時間:約15分
時刻表(平日)
時刻表(休日)
草津駅から:約4,500円(約30分)
石部駅から:約1,700円(約10分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
タクシー配車連絡先(草津駅周辺)
タクシー配車連絡先(石部駅周辺)
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!