寂光院(じゃっこういん)は、京都市左京区大原にある天台宗の寺院です。

初代住職は、かの有名な聖徳太子の乳母であった恵善尼(えぜんに)

その後、「大原女(おおはらめ)」のモデルとも言われる阿波内侍(あわのないし)平清盛の息女・建礼門院徳子(けんれいもんいんとくこ)といった高貴な女性が住職を務めた尼寺としての歴史をつむぎます。

特に建礼門院徳子は、源平合戦に敗れ滅亡した平家一門の菩提を弔い終生をこの地で過ごしたと言われ、そのエピソードはかの有名な「平家物語(へいけものがたり)」にも書かれています。

まさに一世を風靡した平氏の鎮魂を担ったお寺でもあるんですね!

そんな寂光院の見どころは、「平家物語ゆかりの庭園」!

平家物語が書かれた当時の景観を残す庭園では、諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きが今も聞こえてくるようです。


寂光院の歴史

では、まずはじめに寂光院の歴史と訪問する際に知っておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!


寂光院の歴史を刻むこま札

寂光院の正確な創建時期は不明です。

ただ、一説によると聖徳太子(しょうとくたいし)が父・用明天皇(ようめいてんのう)の菩提を弔うため、飛鳥時代の594年(推古天皇2年)に建立したと言われます。

その際、初代住職として迎えられたのが聖徳太子の乳母であった恵善尼(えぜんに)

お寺の起こりから、すでに「尼寺」だったんですね。

その後、平安時代に入ると平清盛(たいらのきよもり)の息女・平徳子(たいらのとくこ)に仕えた阿波内侍(あわのないし)が第二代の住職を務めたため、平氏との縁が出来ることとなります。


寂光院-入り口扉の菊花紋

平安時代末期には、治承・寿永の乱(じしょう・じゅえいのらん)、いわゆる源平合戦(げんぺいがっせん)が勃発。

結果は皆さんご存知の通り、源氏の勝利で終わり栄華を極めた平氏は滅亡。

平徳子は死期を悟り我が子と共に入水しようとするも、三種の神器を所持していたため相手方に捕まります。

が、わずか9歳だった我が子・安徳天皇(あんとくてんのう)はこの時に亡くなってしまいます。

一人生き延びた平徳子はその後仏門に入り、建礼門院(けんれいもんいん)と称することに。

源平合戦が終わった1185年には、この寂光院の第三代住持として入寺します。

以後は平家一門や我が子・安徳天皇の魂を弔うため、その一生をこの地で祈りを捧げることに費やしたんだとか。

これらのエピソードが、建礼門院(平徳子)が平家物語の悲劇のヒロインと言われる理由ですね。


寂光院-苔の庭園にひっそり佇む地蔵菩薩

戦に死はつきものとはいえ、自身の目の前で我が子が亡くなり他の士族もことごとく討ち死にした中、自分だけ生きながらえる。

まさに平徳子の一生は、平家物語の冒頭に書かれた一説を体現しているかのように波乱万丈だったんですね。

では最後に、その平家物語の一節で締めましょう。

祗園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常の響きあり。

娑羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理をあらはす。

おごれる人も久しからず、唯(ただ)春の夜の夢のごとし。

意訳すると、

祇園精舎の鐘の音は、まるでこの世のすべては絶えず変化するという諸行無常に聞こえますね。

沙羅双樹の美しい花の色があせていく様は、どんなに勢いがある者も必ず衰える道理をあらわすようです。

今は権力におごり偉そうにしている人も、長くは続かない。それはまるで春の夜の夢のようです。

といったところでしょうか。

うーん、現代に生きる私たちの胸にも刺さる教訓です・・・。

自分が天狗になったり調子に乗ったりしたときは、このお寺で建礼門院の人生に想いを馳せながら自身を顧みるのも良いかもしれませんね!

平家物語って、まさに日本最古の自己啓発書/ビジネス書なんじゃないかとも思ってしまうほど濃い内容ですよね。

平家物語についてより詳しく知りたい方には、以下の書籍がおすすめですよ。

おしまい。

寂光院について

お寺のWebサイト

お寺の詳細

住所:〒601-1248 京都市左京区大原草生町676

連絡先:075-744-3341

創建:不明(一説では594年)

開基:不明(一説では聖徳太子

宗派:天台宗(てんだいしゅう)

本尊:六万体地蔵菩薩(ろくまんたいじぞうぼさつ)

拝観時間

3月~11月 9:00~17:00
12月~2月(正月三が日を除く) 9:00~16:30
1月1日~3日 10:00~16:00

拝観料

高校生以上 600円
中学生 350円
小学生 100円

その他注意点

・写真や動画撮影可能な場所は、必ず係員に確認しましょう。

・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてください。


寂光院のパンフレット

では次に、寂光院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!


寂光院の見どころ

「*」のついている見どころは有料エリアです。

受付

寂光院-入り口の受付

今回訪れたのは新緑が美しい5月上旬、入口の受付で拝観料を支払います。

御朱印もこの受付で書いていただけます。


寂光院-入り口の石階段

入口の受付を抜けると、風情ある石階段が続きます。

ここ寂光院は柴漬け(しばづけ)発祥の地、住持であった建礼門院さんが名付け親なんだとか!

また、ここは秋の紅葉の名所としても知られますが、新緑の時期もとても綺麗なんですよ。

しかもこの時期は、境内の池でモリアオガエルの産卵を見ることも出来ちゃうんです。

山門*

寂光院の山門

新緑に囲まれた石階段を上り終えると、山門(さんもん)が見えてきました!

江戸時代の建立と言われ、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根が特徴的です。

本堂*

寂光院の本堂

山門をくぐった先には、本堂(ほんどう)があります。

ご本尊と共に、2000年(平成12年)に発生した不審火で焼失した悲しい歴史を持ちます。


寂光院-本堂の扁額

現在の建物は2005年(平成17年)に再建されたもので、以前と同じく桃山時代の建築様式を今に残しています。


寂光院-ご本尊の六万体地蔵菩薩
寂光院-六万体地蔵菩薩立像(写真はパンフレットより拝借。)

本堂には、ご本尊の六万体地蔵菩薩立像(ろくまんたいじぞうぼさつりゅうぞう)が祀られています。

不審火の被害に遭った旧ご本尊は、その内側に3000を超える小さな胎内仏(たいないぶつ)が納められており、その一部を宝物殿で見ることができます!


寂光院-建礼門院の彫像
寂光院-阿波内侍像/建礼門院像(写真はパンフレットより拝借。)

本堂には、二代住持・阿波内侍(あわのないし)と三代住持・建礼門院(けんれいもんいん)の木像がご本尊の脇に安置されています。

ご本尊の地蔵菩薩は、言わずと知れた閻魔大王の化身で「子供の守り神」。

9歳で亡くなった我が子・安徳天皇(あんとくてんのう)の魂の安らぎを願い、今でもこの地蔵菩薩の横で祈りを捧げているんでしょうね。

書院*

寂光院の書院

本堂の東側、渡り廊下でつながる書院(しょいん)は、不審火で焼け落ちた本堂の代わりとなるよう2000年に建てられたんだとか。

手前には休憩用の椅子が用意されており、本堂の前庭をゆっくりと眺めることが出来ました。

四方正面の池*

寂光院-四方正面の池

本堂の東側には、三段の滝が配された四方正面(しほうしょうめん)の池が広がります。

どこから見ても正面に見える名の通り、池の四方を小路が取り囲む池泉回遊式の小庭になっています。

前庭*

寂光院の本堂前庭

本堂の前庭(まえにわ)は、平家物語(へいけものがたり)に書かれた当時の風景を今に残すと言われます。

平家物語によると、後白河法皇は鎌倉時代の1186年の大原御幸の際、お忍びで建礼門院を訪ねこんな詩を詠んだとか。

「池水に汀(みぎわ)の桜散り敷きて 波の花こそ盛なりけれ」

この詩に詠まれた「池水」と「汀の桜」が、今もなおこの庭園に残されている汀の池と桜なんです。


寂光院-汀の池の紅葉

汀の池は秋になると散り紅葉で埋め尽くされ、その光景は圧巻の一言ですよ!

千年姫子松*

寂光院-千年姫子松

庭園にひっそり佇む、千年姫子松(せんねんひめこまつ)

こちらも平家物語の一節に出てくる松そのものと言われており、現在でも御神木として崇められています。


寂光院-千年姫子松の紹介文

平家物語の灌頂巻の一節に、この松の木が出てきます。

「池のうきくさ 浪にただよい 錦をさらすかとあやまたる 中嶋の松にかかれる藤なみの うら紫にさける色」

1000年を超える樹齢を誇っていたそうですが、2000年の不審火のあおりを受けて残念ながら枯死してしまったんだとか。

これもまた、盛者必衰の理をあらわす一つの例えなんでしょうね・・・。

雪見燈籠*

寂光院の雪見燈籠

本堂から向かって右側の庭園には、豊臣秀吉伏見城から寄進したとされる雪見燈籠(ゆきみどうろう)が置かれています。


寂光院の雪見燈籠02

花先形(はなさきがた)という特徴的な傘をかぶった鉄製の燈籠で、胴体には秀吉の家紋・五三桐の透かし彫りのしつらえが!

さすが秀吉が所有した燈籠、細部まで豪華に作られていますね。

諸行無常の鐘楼*

寂光院-諸行無常の鐘楼

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」

庭園西側には、この平家物語始まりの一節を感じさせる鐘楼がかけられています。

こちらは江戸時代の建立なので平家物語当時のものであはありませんが、先ほどの姫子松とあわせてみると冒頭の一節を身近に感じ取ることができます。

建礼門院 御庵室遺跡*

寂光院 建礼門院 御庵室遺跡

境内の西側にある苔むした広場、ここが建礼門院の御庵室(ごあんしつ)のあった場所と伝えられています。

庵室(あんしつ)」とは世捨て人などが住まう質素な佇まいの住まいのこと。


寂光院-苔庭に佇む地蔵菩薩

「たけきものも遂には滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ」

平家物語のこの一節どおり、栄華を極めた平家きってのお嬢様であった建礼門院が、その晩年をこうした住まいで過ごすことに、訪れた後白河法皇(ごしらかわほうおう)は驚き涙したと言われます。

収蔵庫*

寂光院の収蔵庫

建礼門院の御庵室(ごあんしつ)の先、境内の一番西側に位置するのが収蔵庫(しゅうぞうこ)です。

こちらには、2000年の不審火で焼けつつもその姿を墨の形で残す旧ご本尊が収蔵されています。

焼けてなお重要文化財の指定を受けており、今後もこの収蔵庫で日の目を見ることなく大事に保管されるそうです。

鳳智松殿(宝物殿)*

寂光院の宝物庫

本堂への石階段の途中には、2006年に建設された宝物庫・鳳智松殿(ほうちしょうでん)があります。

このお寺に伝わる平家物語ゆかりの文化財や、焼け落ちた旧ご本尊の胎内仏などが展示されていました!

茶室 孤雲*

寂光院-茶室 孤雲の入り口

宝物庫をまっすぐ進むと、苔むした茶室への入り口があります。


寂光院-茶室 孤雲

入口をくぐると、茶室の「孤雲(こうん)」が見えてきます。

建物は、京都御所にて開かれた昭和天皇即位の御大祭で使われた部材が下賜されたものです。


寂光院-茶室 孤雲02

建礼門院の住まいには、天台宗の僧・寂照(じゃくしょう)が詠んだ以下の文節が飾られていたんだとか。

「笙歌(せいが)遥かに聞こゆ孤雲の上 聖衆(しょうじゅ)来迎(らいごう)す落日の前」

茶室の名前は、極楽浄土からの菩薩様のお迎えを詠んだ上記の文節より来ていると言います。

また茶室前の大きな池は、モリアオガエルの産卵の場所にもなっています!

建礼門院 大原西陵

寂光院-大原西陵の看板

寂光院境内の外、東側には建礼門院のお墓へ通じる小さな道があります。

建礼門院は高倉天皇(たかくらてんのう)の后、皇后と言う立場でもあったため、現在そのお墓は寂光院ではなく宮内庁の管轄なんですね。

境外にあり訪問を忘れがちなので、忘れずにお参りしましょう!


寂光院-建礼門院墓所への参道

石畳の狭い参道が、お墓まで続いています。


寂光院-建礼門院の墓所

こちらが建礼門院の墓所、大原西陵(おおはらにしのみささぎ)です。

建礼門院が懇意にしていた後鳥羽上皇のお墓は、三千院(さんぜんいん)の北にある「大原陵(おおはらのみささぎ)」。

建礼門院のこのお墓は、後鳥羽上皇のお墓の西側に位置するため「大原西陵」と呼ばれているんですね!

寂光院の紅葉

寂光院の境内及び周辺は、紅葉の名所としても有名です。

紅葉の見ごろは、毎年11月下旬~12月上旬ごろです!

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寂光院で撮影した動画

寂光院で撮影した写真

Jakko-in Temple (Sakyo Ward, Kyoto):寂光院(京都市左京区)


寂光院の御朱印

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寂光院の御朱印は、ご本尊である「地蔵尊(じぞうそん)」の墨文字です。

寂光院への行き方/アクセス方法

寂光院のある大原には、電車の最寄り駅がありません。

京都駅、河原町駅、国際会館駅や出町柳駅から京都バスに乗車し「大原バス停」で下車、そこから徒歩(約15分)で向かいます。

「国際会館駅」まで電車で行き、そこから「京都バス」に乗車する行き方が一番おすすめです。

この路線を走るバスには「一日乗車券」が使えません!


大阪駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

②京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


なんば駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①大阪メトロ(地下鉄)で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。

②JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。

③京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


京都駅からのルート例(電車)

乗換え案内(電車)

①京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。


地下鉄 国際会館駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「国際会館駅前 乗り場3」から「京都バス19系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:19系統[大原・小出石行き] 
乗車バス停:国際会館駅前[乗り場3]
降車バス停:大原
運賃:350円
所要時間:約22分

■19系統[大原・小出石行き] の時刻表


京阪 出町柳駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「出町柳駅前 乗り場C」から「京都バス16/17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:16/17系統[大原行き] 
乗車バス停:出町柳駅前 乗り場C
降車バス停:大原
運賃:430円
所要時間:約33分

■16/17系統[大原行き] の時刻表


阪急 河原町駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「河原町通北行のりば」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:河原町通北行のりば
降車バス停:大原
運賃:520円
所要時間:約52分

■17系統[大原行き] の時刻表


JR/地下鉄 京都駅からバスで行く場合

乗換え案内(バス)

「京都駅前 乗り場C3」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。

バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き] 
乗車バス停:京都駅前 乗り場C3
降車バス停:大原
運賃:550円
所要時間:約68分

■17系統[大原行き] の時刻表


最寄りバス停「大原」からのルート例(徒歩)

大原バス停から寂光院までは約1km、徒歩20分です。


タクシーを使う場合

京都駅から:約6600 (約40分)

河原町駅/祇園四条駅から:約5900円(約35分)

国際会館駅から:約3500円(約20分)

・タクシー運転手に行き先を告げたい場合

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・タクシーを呼びたい場合

taxi-call

・タクシー配車連絡先(京都駅周辺)


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いかがでしたか?

それでは楽しい旅を!( *´艸`)