圓徳院/円徳院(えんとくいん)は、京都市東山区にある臨済宗建仁寺派のお寺です。
豊臣秀吉とその正室・北政所(きたのまんどころ)ゆかりの寺院である高台寺(こうだいじ)の塔頭であるこのお寺は秀吉の死後、北政所がその余生を静かに過ごした地でもあります。
北政所の通称は「ねね」。
その「ねね」は、先立った秀吉のために高台寺を建立し、夫の魂を弔うためにこの圓徳院/円徳院から毎日通い続けたそうです。
そのため、高台寺とこの圓徳院/円徳院を結ぶ道は今でも「ねねの道」として親しまれています。
そんな圓徳院/円徳院の見どころは、「秀吉とねねの思い出が詰まった伏見城の遺構とその庭園」!
境内の書院とその前庭は、秀吉とねねが長い時間を共に過ごした今は無き貴重な伏見城の遺構が移築されたもの。
まさに、秀吉のことを誰よりも愛したとされる「ねね」の愛情が垣間見えるお寺ですね。
「ねねの秀吉に対する愛情の深さを知りたければ圓徳院へ!」
今回はそんな圓徳院/円徳院を訪れてみました。
圓徳院/円徳院の歴史
では、まずはじめに圓徳院/円徳院の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
この圓徳院/円徳院(えんとくいん)は、豊臣秀吉の菩提を弔うために建立された高台寺(こうだいじ)の塔頭の一つ。
秀吉の死から7年後の1605年、正室であった北政所(きたのまんどころ)は朝廷から「高台院(こうだいいん)」という称号をもらいうけたのを契機に、秀吉の魂を弔う高台寺(こうだいじ)の建立に取り掛かります。
そして、まずは何よりも秀吉との思い出が詰まった建物をこの地に!
ということで、秀吉と北政所が長きを共にした伏見城の化粧御殿とその前庭をこの地に移築しました。
その化粧御殿こそが、現在の圓徳院/円徳院の書院です。
その後、北政所の甥であった木下利房(きのしたとしふさ)がこの化粧御殿を預かりお寺として整備し、「永興院(えいこういん)」と名付けます。
この木下利房の戒名が「円徳院殿半湖休鷗居士」。
江戸時代の1637年、利房の功績をたたえてお寺の名前が「圓徳院(えんとくいん)」に改名されましたとさ。
閑話休題。
この圓徳院に関係が深い北政所、通称「ねね」については皆さん良くご存知だと思います。
ので、今回はこの圓徳院をお寺として整備した「木下利房(きのしたとしふさ)」についてちょっと調べてみました!
うーん、正直あまり耳にしたことが無い人物ですよね。
「ねね」の甥にあたるこの人物は、一体どんな歴史を持っているのでしょうか?
利房は若狭国(わかさのくに)出身、「木下」という名字から秀吉(幼いころの名は「木下藤吉郎」)と何か血縁があると思いきや、全く血のつながりは無い人物。
関ヶ原の戦いでは敗北した西軍に所属し、戦いの後には死刑が決まっていたそうです。
しかしこの際に、叔母の「ねね」が颯爽と登場!
秀吉の正室であったねねは、東軍の大将だった徳川家康(とくがわいえやす)に対しても絶大な影響力があった人物。
てことでねねは家康に可愛い甥の助命を嘆願、なんとそのお陰で利房は許されちゃいました!
利房「やべぇ、戦に負けて首ちょんぱになっちゃう・・・。叔母さん助けてー!」
ねね「任せときなはれ。ちょっと家康はん、うちの甥っ子イジメんといてくれはりますか?」
徳川家康「ぐぬぬ。ねね姉さんに言われたらしゃーないわ。許したるわ・・・。」
ねね「毎度おおきに。」
利房「うぉお、ダメ元で頼んだのに叔母さんすげぇ・・・。」
ねね姐さん、すげぇっす!ぱねぇっす!
そんな木下利房と北政所は、豊臣秀頼(とよとみひでより)の死により豊臣家が滅亡した大坂の陣(おおさかのじん)でこんな一幕も。
北政所は先に書いた通りあの徳川家康も一目置いた豊臣川の重臣で、しかも大坂の陣で狙われた秀頼の後見人も務めた人物。
そんな北政所、本来ならこの戦に口を出さない訳が無いのですがなぜか大阪の陣では沈黙を貫きました。
何故か?
そこに大きく関係したのがこの木下利房なんです。
北政所「秀頼が危ない!あのたぬきおやじ(家康)に文句言ってきたるわ!籠をお出し!」
利房「ねね叔母さん、もう昔とは立場が違うんやからやめなはれ!叔母さんの命まで危ないで!」
利房「わしは叔母さんに命を助けられたんや!ゼッタイに行かせへんで!」
北政所「ぐぬぬ。可愛い甥に言われたらしゃーない。行くのは辞めとくわ。」
てな感じで大坂の陣の最中、木下利房は北政所の目付け役として活躍していたんですね。
ちなみに、家康や幕府は絶対に北政所には来てほしくなかったので「高台院をして大坂に至らしむべからず!」と利房に厳命していたんだとか。
家康「ねね姐さんに来られたら色々かなわんかったわ…。利房ようやった…。」
そんな活躍もあり、利房は最終的に備中(現在の岡山)の領地を家康から拝領し藩主として活躍しましたとさ。
この圓徳院/円徳院はそんな木下利房が整備し、叔母のねねがその余生を過ごしたお寺です。
おしまい。
高台寺についても知ろう!
塔頭であるこの圓徳院/円徳院だけではなく、親寺である高台寺(こうだいじ)にも興味がある人はぜひ上記の記事も見てくださいね!
圓徳院/円徳院について
お寺の詳細
住所:〒605-0825 京都市東山区高台寺下河原町530
連絡先:075-525-0101
創建:1605年
開基:三江紹益(さんこうじょうえき)
宗派:臨済宗建仁寺派
ご本尊:釈迦如来(しゃかにょらい)
拝観時間
10:00~17:30(17:00受付終了)
拝観料
大人 | 500円 |
中高生 | 200円 |
その他注意点
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてくださいね。
では次に、圓徳院/円徳院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
春の夜間ライトアップ「京都東山花灯路」
この圓徳院/円徳院は、毎年春に開催される「京都東山花灯路」の会場です。
とても幻想的なライトアップイベントですので、春にこの圓徳院/円徳院に行く際は夜もおすすめです!
圓徳院/円徳院の見どころ
*のついている見どころは有料エリアです。
圓徳院/円徳院(えんとくいん)は京都市東山区の町家が並ぶ風情ある石畳の道路、通称「ねねの道」にあります。
最寄り駅の祇園四条駅からは約1km、徒歩で20分ほどの距離にあります。
このねねの道は、昔ながらの京都の露地の雰囲気を味わえる通路して観光客にも大人気。
着付けを施した観光客の女性や、お茶屋さんや料理屋さんも多いからでしょうか本物の舞妓さんや芸子さんもたまにこの石畳を歩いています。
お茶屋さんやおみやげ物屋さんも点在しているので、ぜひ祇園四条駅から歩いて散策することをおすすめします。
長屋門
左手に高台寺(こうだいじ)への階段を見つつねねの道を進むと、右手に白壁の長屋が見えてきます。
こちらが、圓徳院/円徳院の入り口である長屋門(ながやもん)です。
右側の白壁の中には、侍が待機できるスペースが用意されているんだとか。
ねねが晩年を過ごした住居だったため、ねねを守るためにこのような長屋風の門構えになっているんですね。
長屋門から一歩境内に入ると、そこはねねの道の喧騒を忘れさせてくれるほどの静寂の世界。
石畳と苔、自然の調和が素晴らしい空間が広がっています。
では、境内を進んでいきたいと思います。
唐門*
風情ある石畳の先に、方丈への入り口である唐門(からもん)が見えてきました。
なだらかな丘を想像させる独特の曲線を描くこの屋根の造形を唐破風(からはふ)と言い、この形状の門の総称が唐門(からもん)なんですね。
唐門の上には「圓徳(えんとく)」の扁額が掲げられていました。
秀吉公好みの手水鉢*
境内を進むと、苔の路地に風情ある手水鉢(ちょうずばち)がありました。
こちらは豊臣秀吉公が生前好んだと言われているため、秀吉公好みの手水鉢と呼ばれています。
庫裏*
境内を進むと右手に庫裏(くり)が見えてきました。
方丈と連結している構造になっていますが、こちらの建物側からは入ることはできません。
方丈*
庫裏の先に、方丈(ほうじょう)への入り口があります。
この方丈は江戸時代の1605年、この圓徳院の建立に合わせてて新築された建物です。
その後傷みが激しかったために、1994年(平成6年)に全面が解体修理されました。
この方丈には、重要文化財に指定されている長谷川等伯(はせがわとうはく)筆の32面に及ぶ障壁画が飾られています。
また、正面の室中の間には昭和/平成期の日本画家・赤松燎(あかまつりょう)氏の遺作である「白龍」の襖絵があります。
室内の写真撮影は禁止でしたので、ぜひその目で見に行ってみてくださいね!
南庭*
方丈を進むとその縁側越しに見えてくるのが方丈庭園、通称「南庭(なんてい)」です。
ねねの遺志を継ぎ、特に女性の目線で楽しめるように四季折々の花と紅葉が楽しめる配置になっているんだとか。
(私が訪れた際は初夏で、丁度お花が無い時期でしたが…。笑)
白砂が規則正しく線引きされた、小さいながらも「まとまり」の造形美を感じさせてくれる枯山水庭園です。
こちらの庭園は京都の老舗造園業を営む北山安夫(きたやまやすお)氏により修復されたものです。
では次に、方丈の建物から渡り廊下で続いている北書院に向かいたいと思います。
北書院*
渡り廊下を歩いて行くと、北書院(きたしょいん)が見えてきました!
この北書院こそが江戸時代の1605年に伏見城の化粧御殿を移築したものであり、秀吉とねねの思い出が詰まった建物。
ねねは晩年の19年間、この北書院から欠かさず高台寺に通って秀吉の魂を弔ったと言われます。
まさに秀吉に対するねねの深い愛情を感じさせてくれる場所ですね。
北庭 (名勝)*
北書院は、苔の築山と岩、紅葉の配置が美しい庭園を有しています。
通称「北庭(ほくてい)」と呼ばれるこの枯山水庭園は、北書院が伏見城から移築される際にあった庭園の素材をそのままこちらに移して再現したものなんだとか。
まさにこの風景は、「秀吉公とねねが見ていた光景」といっても過言ではないんですね。
この庭園は江戸時代の名作庭家の一人・賢庭(けんてい)作、その後小堀遠州(こぼりえんしゅう)によって改築されたという豪華キャストにより手掛けられた庭園で、現在は国の名勝に指定されています。
元々は池泉回遊式庭園だったそうですが、現在では水が枯れて池は無くなっています。
この物悲しく枯れた風景もまた良いものですね。
茶室*
さすが元天下人の奥が住んでいた住居跡だけあって、北書院の奥には茶室(ちゃしつ)も設けられています。
季節によっては、ここで実際にお抹茶の設定を頂くこともできるんですよ。
ここが境内の一番奥に当たるのですが、拝観経路としては先ほどの方丈に戻るのでは無く、この北書院側から靴を履いて境内に下りて行きます。
三面大黒天
北書院から靴を履いて進むと、入り口とは逆の方向にある三面大黒天(さんめんだいこくてん)の境内に出ます。
この大黒天(だいこくてん)は、弁財天と毘沙門天の顔も併せ持っていることから「三面」と言われているんだとか。
この三面大黒天は豊臣秀吉の立身出世をもたらした神様として、秀吉が念持仏(ねんじぶつ)として拝んでいたそうです。
大変なご利益がある神様なので、忘れずに参拝していきましょうね!
歌仙堂
三面大黒天の脇には歌仙堂(かせんどう)があります。
この建物は詩仙堂(しせんどう)、雅仙堂と合わせて「京都三堂」の一つと数えられます。
圓徳院を整備した木下利房の異母兄・木下勝俊(きのしたかつとし)は、優れた歌人として後水尾天皇が選んだ集外三十六歌仙(しゅうがいさんじゅうろっかせん)の一人。
この歌仙堂には、そんな和歌の天才であった木下勝俊が祀られています。
これで、桂春院の主な見どころを見て回りました!
訪問の感想としては、やはり秀吉とねねが愛したとされる北書院からの庭園の眺めが素晴らしかったです!
ねねの道や高台寺周辺はいつも観光客で混雑しますが、そんな喧騒に疲れたらこの圓徳院の庭園風景を見て一休みするのも良いかもしれませんね。
皆さんも是非行ってみてくださいね!
圓徳院/円徳院の写真
圓徳院/円徳院の御朱印
この圓徳院/円徳院では、幸福や長命を願う意味を持つ「福寿(ふくじゅ)」の御朱印を頂きました。
御朱印は入口の受付で頂くことができます。(300円)
圓徳院/円徳院への行き方・アクセス方法
最寄り駅は「祇園四条駅」若しくは「京都河原町駅」です。
「京都駅」、「阪急 河原町駅」、「京阪 祇園四条駅」からバスで行くことも出来ます。
大阪駅から祇園四条駅へのルート例(電車)
①JR大阪環状線で「大阪駅」から「京橋駅」へ行き、京阪電車に乗り換え。
②京阪電車で「京橋駅」から「祇園四条駅」へ。
なんば駅から祇園四条駅へのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「淀屋橋駅」へ行き、京阪電車に乗り換え。
②京阪電車で「淀屋橋駅」から「祇園四条駅」へ。
京都駅から祇園四条駅へのルート例(電車)
①JR奈良線で「京都駅」から「東福寺駅」へ行き、京阪電車に乗り換え。
②京阪電車で「東福寺駅」から「祇園四条駅」へ。
祇園四条駅からの徒歩ルート例
徒歩約20分(1km)です。
京都駅からバスに乗る場合
「京都駅前 乗り場D2」から京都市バス「206系統」に乗車、「東山安井」バス停で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:206系統[祇園・北大路バスターミナル行き]
乗車バス停:京都駅前[乗り場D2]
降車バス停:東山安井
運賃:230円
所要時間:約19分
京都河原町駅からバスに乗る場合
「四条河原町 乗り場E(東行き)」から京都市バス「207系統」に乗車、「東山安井」バス停で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:207系統[清水寺・東福寺行き]
乗車バス停:四条河原町[乗り場E東行き]
降車バス停:東山安井
運賃:230円
所要時間:約7分
祇園四条駅からバスに乗る場合
「四条京阪前 乗り場A」から京都市バス「207系統」に乗車、「東山安井」で下車。
バス会社:京都市バス
行先・系統:207系統[清水寺・東福寺行き]
乗車バス停:四条京阪前[乗り場A]
降車バス停:東山安井
運賃:230円
所要時間:約7分
タクシーで行く場合
京都駅から:約1,600円(約10分)
京阪 祇園四条駅から:約720円(約5分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
タクシー配車連絡先(京都駅周辺)
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!