勝林院(しょうりんいん)は、京都市左京区大原にある天台宗の寺院です。
この大原の地は、「魚山声明(ぎょざんしょうみょう)」という天台宗には欠かせない仏教声楽の聖地。
中でもこのお寺は、平安時代に慈覚大師・円仁(えんにん)が天台声明(てんだいしょうみょう)の道場として創建し、北部にある来迎院(らいごういん)と共に「魚山大原寺(ぎょざんだいげんじ)」と呼ばれた一つの大きな念仏道場の場として栄えました。
また、浄土宗の開祖・法然(ほうねん)を中心とし、鎌倉時代のしょっぱなに開催された仏教のガチンコ論争、いわゆる「大原問答(おおはらもんどう)」開催の場所でもあるんです!
そんな勝林院の見どころは、「総欅(けやき)造りの本堂と証拠の阿弥陀如来」!
境内の大部分を占める重厚な本堂には、その昔光を放ち極楽往生の証拠を示した!とされる阿弥陀如来が静かに鎮座しています。
今回はそんな勝林院を訪れてみました。
勝林院の歴史
では、まずはじめに勝林院の「歴史」と「訪問する際に知っておきたいポイント」を一緒に見て行きましょう!
勝林院は、平安時代の835年(承和2年)に慈覚大師と称された天台宗の高僧・円仁(えんにん)がこの地に興した念仏道場がその起こりと言われています。
この円仁さんは、かの有名な遣唐使(けんとうし)の最終メンバーの一人で、2回の渡航に失敗し3回目で船がほぼ全壊した状態でようやく命からがら成功した逸話を残すお方。(ちなみに日本への帰りも命からがらというギリギリの人生を歩まれています。)
そして、中国で見て触れて感じとった本場の「声明(しょうみょう)」を日本に持ち帰りここ大原の地に伝えました。
しかし比叡山延暦寺に生じた「山門派」と「寺門派」の派閥抗争、いわゆる山門寺門の抗争(さんもんじもんのこうそう)に巻き込まれ、お寺は荒廃しちゃいます。
そんなお寺を救ったのが、中興の祖である寂源(じゃくげん)さん。
寂源さんの尽力により、このお寺は平安時代の1013年(長和2年)に声明の修行道場として再興を果たし、鎌倉時代初期の1186年(文治2年)には「大原問答(おおはらもんどう)」が開催されるまでに!
その後、本堂は幾度かの火事で焼失するも江戸時代の1778年(安永7年)に再興され、現在に至ります。
では、ここからは「大原問答(おおはらもんどう)」についてちょっとまとめてみます。
これは簡単に言うと、
「浄土宗を開いた法然さんを、その他宗派380人が12の難問で一斉に問い詰める会」
です。
ひぇぇ、法然さんフルボッコの一方的な会だったんですね。
おいおい、何で寄ってたかって法然さんをボッコボコにしたかったのかって?
はい、今でこそ浄土宗は日本でメジャーな仏教の一派ですがこの時代ではいわゆる「新興宗派」。
しかも、その教義が今までの仏教の教えとは一線を画す「他力本願(たりきほんがん)」というこんな教えでした。
法然「修行した特別な人じゃなくても、誰にでも阿弥陀如来さまに頼り救ってもらうチャンスがあるんだよ!」
法然「そのために、阿弥陀如来さまを「南無阿弥陀仏」の念仏で称えようね!」
そんな教えだったんで、一般市民のウケがすごく良く一気に人気の宗派となっていったんです。
そうすると面白くないのが今まで必死に修行してきた他の宗派の皆さん。
諸々「念仏唱えるだけとかありえへんわ。ちょっと懲らしめたろか。」
こんないきさつから、大原問答が開かれることになったんだとさ。
因みに法然さん、このアウェイ感満載の大原問答を笑顔で心の底から楽しみにしていたんだそうです!
なんて強心臓の持ち主・・・。
さてさてそんな法然さんサンドバック状態だった大原問答ですが、結果はどうなったのでしょうか?
結果は・・・、
法然さんの圧勝!
だったんです。
法然さん、高名な僧たちが用意した12個の難問に対し完璧かつ的確な受け答えをしたんだそうな。
法然さん・・・、ぱねぇっす。
そんなぱねぇ法然さんの活躍により、他の高僧からも、
諸々「法然さんは、知恵を司る勢至菩薩(せいしぼさつ)の生まれ変わりや!」
諸々「みんなも法然さんに習って、今まで以上に念仏を唱えようや!」
的な流れになったんだそうな。
現在の日本仏教のイメージ「念仏を唱える=南無阿弥陀仏」も、きっとこの時点で確立したんでしょうね!
だからこそ、この大原の地には念仏の音律ともされる「声明(しょうみょう)」が発展してきたんでしょう。
教訓「圧迫面接/プレゼンがあっても、法然さんのように前向きに頑張れば何とかなる(かも知れん)。」
おしまい。
勝林院について
Webサイト
お寺の詳細
住所:〒601-1241 京都府京都市左京区大原勝林院町187
連絡先①:075-744-2409(宝泉院)
連絡先②:075-744-2537(実光院)
創建:835年(平安時代)
中興:1013年(平安時代)
開基:円仁(えんにん)/寂源(じゃくげん)
宗派:天台宗(てんだいしゅう)
本尊:阿弥陀如来(あみだにょらい)
拝観時間
9:00~16:30
拝観料
高校生以上 | 小・中学生 |
300円 | 200円 |
その他注意点
・写真や動画撮影可能な場所は、必ず係員に確認しましょう。
・神社やお寺の正式な参拝方法は以下の記事を参考にしてください。
では次に、勝林院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
勝林院の見どころ
「*」のついている見どころは有料エリアです。
本堂*
お寺の本堂(ほんどう)は、江戸時代の1778年(安永7年)に再建されたもの。
この勝林院の境内、実はその全体が「極楽浄土(ごくらくじょうど)」に見立てられています。
参拝者である私たちは、極楽浄土(境内)の奥にいらっしゃる「阿弥陀如来(あみだにょらい)」に会いに行くイメージですね。
参拝する際には、この世界観をちょっと覚えておくと良いかもです。
この本堂に鎮座されているのが、京都市指定登録文化財の阿弥陀如来(あみだにょらい)です。
大原問答の際に手から光を発して極楽浄土を指し示した古事を持つため「証拠の阿弥陀如来(しょうこのあみだにょらい)」とも呼ばれます。
さて、阿弥陀様を拝んだ後は、その他の境内の見どころを拝観していきたいと思います。
鐘楼/梵鐘【重要文化財】*
こちらは境内入口の右手にある鐘楼/梵鐘(しょうろう/ぼんしょう)です。
鐘楼は、江戸時代の寛永年間(1624-1645)に春日局(かすがのつぼね)の寄進により再建されたもの。
かかる梵鐘は、このお寺が中興した平安時代中期のもので、重要文化財に指定されています。
山王社/観音堂*
境内の右手奥にひっそりと佇むのは、このお寺の鎮守神(ちんじゅがみ)を祀る山王社(さんのうしゃ)と観音堂(かんのんどう)。
とても厳かな雰囲気が漂っていました。
宝篋印塔【重要文化財】*
観音堂の横には、鎌倉時代の末期に建てられたとされる宝篋印塔(ほうきょういんとう)があります。
境内の奥に無造作にありますが、れっきとした重要文化財なんですよ!
もともと宝篋印塔は、「一切如来心秘密全身舎利宝筺印陀羅尼経」というゼッタイ覚えられそうにない名前の経典を納めるための塔でした。
その後は供養塔やお墓としても一般化したのですが、この宝篋印塔がどんな意図で建てられたのかは分かりませんでした。
西林院跡地*
勝林院の境内にはその昔、本堂とは別の阿弥陀如来を祀った念仏の修行道場があったと言います。
それが「西林院堂(さいりんいんどう)」と呼ばれた阿弥陀堂。
今はその面影もなく、跡地がひっそりと残るのみとなっていました。
平井乙麿の歌碑*
境内入口の左手にある、蔵のそばに建てられている歌碑。
ここには歌人・平井乙麿(ひらいおつまろ)が残した歌が刻まれていました。
「苔の上を まろぶがごとく 流れゆく 呂律(りょりつ)の里の 弥陀の声明」
意訳すると・・・、
「僧侶が奏でるお経の旋律は、まるでこの境内の苔の上をゆっくりところがるように流れていくんだなぁ・・・」
てな感じでしょうか?
弁天堂*
本堂の左手を進んでいくと見えてくるのがとても小さな弁天堂(べんてんどう)。
お堂というよりは祠(ほこら)と言ったほうが良いかもしれないですね。
弁財天(べんざいてん)は七福神の一尊で縁起物、こうして数多くのお寺に祀られるほど大人気の神様なんですよね。
最胤親王の墓*
勝林院の見どころのラストを飾るのは、本堂の裏手にひっそり佇む最胤親王(さいいんしんのう)のお墓。
最胤親王とは、伏見宮邦輔親王(ふしみのみやくにすけしんのう)の第8皇子であり三千院(さんぜんいん)にて出家、その後169世の天台座主となった人物です。
私はお寺や神社の「ひっそりと佇む系」の見どころが好きなのですが、このお寺にはこうした見どころが多くありとても楽しめました!
勝林院の紅葉
勝林院の境内及び周辺は、紅葉の名所としても有名です。
紅葉の見ごろは、毎年11月下旬~12月上旬ごろです!
勝林院の動画
勝林院の写真
勝林院の御朱印
勝林院の御朱印は、ここが大原問答開催の場を表す「大原問答(おおはらもんどう)」の墨文字です。
勝林院への行き方/アクセス方法
勝林院のある大原には、電車の最寄り駅がありません。
京都駅、河原町駅、国際会館駅や出町柳駅から京都バスに乗車し「大原バス停」で下車、そこから徒歩(約15分)で向かいます。
「国際会館駅」まで電車で行き、そこから「京都バス」に乗車する行き方が一番おすすめです。
この路線を走るバスには「一日乗車券」が使えません!
大阪駅からのルート例(電車)
①JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。
②京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。
なんば駅からのルート例(電車)
①大阪メトロ(地下鉄)で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。
②JR京都線で「大阪駅」から「京都駅」へ行き、京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え。
③京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。
京都駅からのルート例(電車)
①京都市営地下鉄烏丸線で「京都駅」から終点の「国際会館駅」へ。
地下鉄 国際会館駅からバスで行く場合
「国際会館駅前 乗り場3」から「京都バス19系統」に乗車、「大原」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:19系統[大原・小出石行き]
乗車バス停:国際会館駅前[乗り場3]
降車バス停:大原
運賃:350円
所要時間:約22分
■19系統[大原・小出石行き] の時刻表
京阪 出町柳駅からバスで行く場合
「出町柳駅前 乗り場C」から「京都バス16/17系統」に乗車、「大原」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:16/17系統[大原行き]
乗車バス停:出町柳駅前 乗り場C
降車バス停:大原
運賃:430円
所要時間:約33分
■16/17系統[大原行き] の時刻表
阪急 河原町駅からバスで行く場合
「河原町通北行のりば」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き]
乗車バス停:河原町通北行のりば
降車バス停:大原
運賃:520円
所要時間:約52分
■17系統[大原行き] の時刻表
JR/地下鉄 京都駅からバスで行く場合
「京都駅前 乗り場C3」から「京都バス17系統」に乗車、「大原」で下車。
バス会社:京都バス
行先・系統:17系統[大原行き]
乗車バス停:京都駅前 乗り場C3
降車バス停:大原
運賃:550円
所要時間:約68分
■17系統[大原行き] の時刻表
最寄りバス停「大原」からのルート例(徒歩)
大原バス停から勝林院までは約700m、徒歩20分です。
タクシーを使う場合
京都駅から:約6600円 (約40分)
河原町駅/祇園四条駅から:約5900円(約35分)
国際会館駅から:約3500円(約20分)
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・タクシーを呼びたい場合
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!( *´艸`)