旧竹林院(きゅうちくりんいん)は、滋賀県大津市にある国指定の名勝庭園を有する里坊です。
里坊(さとぼう)とは、お寺の僧侶が人里に構える住まいのこと。
この旧竹林院はかの有名な比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)のお膝元であり、この延暦寺の里坊の一つとしての歴史があります。
この名勝の見どころは「名勝指定の日本庭園と木のぬくもりがあふれる母屋」!
名勝庭園では春の枝垂れ桜、秋の紅葉をはじめとした四季折々の姿を楽しむことができます。
そんな庭園を風情ある母屋から眺める風景は、時間が経つのを忘れるほどの絶景!
今回はそんな旧竹林院を訪れました。
旧竹林院の歴史
では、まずはじめに旧竹林院の歴史と覚えておきたいポイントを一緒に見て行きましょう!
旧竹林院は、元々は竹林院(ちくりんいん)という比叡山延暦寺の里坊(さとぼう)の一つでした。
中でもここは最も格式が高い里坊であったため、江戸時代に入り広大な敷地に見事な日本庭園が造営されました。
しかし明治時代に入ると、竹林院をはじめとした里坊はことごとく衰退します。
それは何故か?
そこには、「神仏分離(しんぶつぶんり)」と「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」が大きく関係します。
これらは、簡単に言うと主に明治時代に活発に行われた政府による仏教寺院の弾圧です。
江戸幕府が終焉したのち新政府となった明治政府は、当初とても弱い組織でした。
そこで、政治の妨げになりそうな力を持つ集団、特に信徒が多い「神社」や「お寺」の権力を弱めよう!としたんですね。
そんな中行われたのが、先ほどの「神仏分離(しんぶつぶんり)」と「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」。
明治政府は、まず神仏分離によって「神社(神様)」と「お寺(仏様)」を区別することに。
政府「やべぇ。俺らまだひよっこやから、他のでかい集団とか超怖ぇえ!」
政府「神や仏を信じる集団が反抗とかしてきたら・・・、ガクブル。」
政府「せや!神と仏は別モンやってことできっちり分けて弱体化させたろ!」
てなことがあり、神社とお寺の権力を分散。
そこに、政府の施策を拡大解釈した「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」という「お寺をターゲットとした弱体化政策」が民衆に広がりました。
その一番のターゲットにされたお寺こそ、当時強大な権力を有していた「比叡山延暦寺」。
延暦寺は、武装集団となり天皇や時の権力者を脅かすほどの過去があり、その都度弾圧の対象となってきました。
戦国時代の1571年におこった、織田信長(おだのぶなが)による「比叡山焼き討ち」などはその最たる例ですね。
まぁ一言で言うと、
「延暦寺は、ほっとくとやばいぞ!」
という認識だったんですね。
てことで、この明治時代にも真っ先に弾圧の対象になったという訳です。
民衆「延暦寺って怖い寺院は弱体化させなあかんやろ!」
民衆「神と仏が分かれたって事は、もう仏は日本の神様じゃないってことや!」
民衆「よっしゃ、延暦寺を弱体化させるチャンス!寺を取り壊せー!」
延暦寺「ふぇぇ、みんなが寄ってたかってイジメルヨー。」
こんな流れで明治時代に入り延暦寺の力は衰え、比叡山の麓にあった里坊も衰退したという訳です。
当然この竹林院も衰退し、お寺の施設ではなく個人の別荘地となりました。
そのため、もはや「竹林院」というお寺の施設ではないということで「旧竹林院」と呼ばれるようになりましたとさ。
おしまい。
旧竹林院について
Webサイト
施設の詳細
住所:〒520-0113 滋賀県大津市坂本5丁目2−13
連絡先:077-578-0955
開園時間
9:00~17:00(受付は16:30まで)
休園日
月曜日(祝日の場合は開園、翌日が休園日。)
年末(12月26日~12月31日)
入園料金
大人 | 320円 |
小学生 | 160円 |
駐車場
あり(無料)
その他注意点
・写真/動画撮影可能な場所や、一脚/三脚の利用可否は必ず係員に確認しましょう。
では次に、旧竹林院の見どころを訪問時の写真を参考に振り返ってみたいと思います!
旧竹林院の見どころ
*のついている見どころは有料エリアです。
山門
昔はお寺の里坊だったことから、入り口には立派な山門(さんもん)がありました。
因みに山門の前には大きな駐車場があり、無料で利用することができました!
山門を抜けると庫裏(くり)と言うべきでしょうか、昔ながらの日本建築が出迎えてくれました。
こちらで入園料を支払い、院内へと入ります。
母屋
院内の風情ある石畳の通路を進んで行きます。
まず見えてきたのがこの母屋(おもや)。
1897年(明治30年)に建設されたとのことで、木のぬくもりを随所に感じる何とも素敵な近代建築です。
庭園の枝垂れ桜も丁度満開を迎えており、とても素晴らしい光景を拝ませて頂きました。
こちらは母屋の一階にある、全面のガラス戸で囲われている大広間(おおひろま)。
通路縁側から、庭園の風景を貸し切り状態で贅沢に眺めることができました!
私も沢山のお寺や庭園を見に行きましたが、これほど贅沢な光景を楽しめる場所はなかなか無いと思います。
母屋は二階建ての構造。
二階の室内から枝垂れ桜と庭園を見下ろす光景も、また乙なものです。
母屋の室内を十分堪能した後は、庭園の散策に向かいました!
旧竹林院庭園 (名勝)*
まずは南側、少し高台となった場所から旧竹林院庭園(きゅうちくりんいんていえん)を眺めてみます。
苔の緑や八王子山を借景とした中に、近代建築がよい風情を醸し出していますね。
この日本庭園の約3,300平米の広さを誇ります!
竹林院が個人所有になった際、現在の形に改修されたんだとか。
この素晴らしい景観により、庭園全体が国の名勝に指定されています。
春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と四季折々の姿を楽しめるのもこの庭園の大きな特徴です。
私は春の桜しかまだ見ていないので、次回はぜひ別の季節に訪れたいと思います!
四阿(あずまや)*
庭園内には散策路が整備されており、ぐるりと一周することができます。
散策路を進んでいくと、小高い場所に四阿(あずまや)が見えてきました。
こちらの建物は「大津市指定文化財」です。
四阿(あずまや)は「東屋」とも書かれ、庭園に設けられている展望所/休憩所のような役割を持つ建物です。
この庭園のように、比較的大きな庭園で比較的良く見られます。
蓬莱(茶室)*
四阿(あずまや)を抜けてどんどん進むと、今度は茶室が見えてきました。
この庭園には大小二つの茶室があり、こちらは大きいほうの茶室である蓬莱(ほうらい)です。
昔ながらのお寺にある茶室には千利休などが好んだ小さめの茶室が多いのですが、こちらの茶室は本当に大きいですね!
明治時代以降の茶席は、多くに人たちを呼んで楽しんだのでしょうか。
この茶室も、四阿と同じく「大津市指定文化財」です。
天の川席(茶室)*
大きい茶室「蓬莱」のそばには、「天の川席」と呼ばれる小さくこじんまりとした茶室がありました。
このちらの茶室も「大津市指定文化財」です。
メインの入り口から入ると、その奥にサブの入り口が見えると言う面白い構造になっています。
また、茶席は主人と客人は向かい合って座りその間をへりで区切るのが普通だと思いますが、こちらの茶席は、主人の両隣りに客人が座ると言う大変珍しい形式なんだそうです。
約1時間ほどの滞在で、旧竹林院の主な見どころをゆっくりと堪能することが出来ました。
皆さんもぜひ一度足を運んでみてくださいね!
旧竹林院の動画
旧竹林院の写真
旧竹林院への行き方/アクセス方法
最寄り駅は「京阪石山坂本線 坂本駅」、「JR湖西線 比叡山坂本駅」です。
比叡山坂本駅からは徒歩約20分(1.2km)、坂本駅からは徒歩約7分(500m)です。
各駅からは、バスで行くことも出来ます。
大阪駅からのルート例(電車)
①JR京都線/湖西線で「大阪駅」から「比叡山坂本駅」へ。
(JR京都線からの直通電車が無い場合は、「京都駅」でJR湖西線へ乗り換えましょう。)
なんば駅からのルート例(電車)
①大阪メトロ御堂筋線で「なんば駅」から「梅田駅」へ行き、JR京都線に乗り換え。
②JR京都線/湖西線で「大阪駅」から「比叡山坂本駅」へ。
(JR京都線からの直通電車が無い場合は、「京都駅」でJR湖西線へ乗り換えましょう。)
京都駅からのルート例(電車)
①JR湖西線で「京都駅」から「比叡山坂本駅」へ。
比叡山坂本駅/坂本駅からの徒歩ルート例
比叡山坂本駅からは徒歩約20分(1.2km)、坂本駅からは徒歩約7分(500m)です。
比叡山坂本駅からバスに乗車する場合
「比叡山坂本駅乗り場2」から江若交通バス「31/33/41系統」に乗車、「日吉大社前」で下車。
バス会社:江若交通
行先・系統
・31系統[日吉大社・西教寺行き]
・41系統[ケーブル坂本駅行き]
乗車バス停:比叡山坂本駅[乗り場2]
降車バス停:日吉大社前
運賃:230円
所要時間:約5分
坂本駅からバスに乗車する場合
「坂本比叡山口駅乗り場2」から江若交通バス「31/33/41系統」に乗車、「日吉大社前」で下車。
バス会社:江若交通
行先・系統
・31系統[日吉大社・西教寺行き]
・41系統[ケーブル坂本駅行き]
乗車バス停:坂本比叡山口駅[乗り場2]
降車バス停:日吉大社前
運賃:230円
所要時間:約2分
タクシーで行く場合
京都駅から:約7,500円(40分)
京阪 祇園四条駅から:約7,000円(35分)
JR大津駅から約4,000円(20分)
・タクシー運転手に行き先を告げたい場合
・タクシーを呼びたい場合
タクシー配車連絡先(京都駅周辺)
タクシー配車連絡先(大津駅周辺)
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いかがでしたか?
それでは楽しい旅を!